第12章 すれ違い ※
ロングコートを力いっぱい握りしめていると、ジンのシャツを着て私を見下ろすギムレットに奪うように引っ張られた。
「ちょっ・・・何するの!返して!!」
「これ、私の"恋人"の・・・ですよね?彼に返しておきますのでご心配なく〜」
邪魔者は出て行けと言わんばかりに扉の方へ手を向けられる。
悔しい。
命令で組織に入り、居場所を取られ、愛する人を取られ・・・。
こんな惨めな思いをしていても、まだ降谷さんに従わなければならないのだろうか。
これからの人生・・・どの道を歩むのが正解なのか・・・。
勝ち誇った笑みのギムレットを睨んでいると後ろから腕を掴まれた。
「何をしているんですか?メッセージ送ったんですけど・・・・・・油を売る時間はありません。行きますよ」
「待っ・・・ふ・・・、バーボン!待って!」
「待てません。急いでください」
静かに怒りを含んだバーボンに強く引かれ、床に根付いていた足を動かされる。
口角を上げていたギムレットは、私たちを見て下唇を噛んでいて。
消えてと言っていたのに・・・その表情の意味は何?
やっと出て行ったと喜ばないのか。
そんな彼女の姿はアジトから出ると見えなくなり、私の腕はバーボンに掴まれたまま。
早足で進むため、足がもつれそうになる。
「バーボン・・・離してください!自分で歩けます・・・!!」
「逃げられたら困るからな。車に乗ったら離してやる」
逃げたくても・・・逃げる場所などない。
どこに行っても探して連れ出すんでしょ?
別れてからも、結局あなたは私を離さなかった。
こうやって連れ出す機会を伺っていたんだ。
何故そこまで私に執着するの?
側にいてほしい時は、いてくれないのに・・・。
「ミモザッ!!」
反対側の歩道から名前を呼ばれた。
いつものハイネックを着たジンが、ポルシェから降りながら大声で叫んでいる。
寒くないだろうか。
コートを借りたお礼も、直接返すこともできなかった。
本当にギムレットに温めてもらったの?
彼女に愛していると伝えたの?
私と愛し合ったことは忘れているのに・・・どうしてあの頃のような表情をするのだろう。