第12章 すれ違い ※
「ごめんなさい・・・・・・ジンさんは私を恋人にしてくださるみたいです。昨日の夜なんて数え切れないくらい愛されちゃって・・・!あはっ!恥ずかしいっ」
「っ・・・・・・」
全身が震える。
相手にしないでアジトを去れば良かったのに・・・耳を傾けてしまった自分が悪い。
昨夜ジンと会ったのはギムレットとの情事後?
それとも私にコートを貸して、彼の冷えた身体はギムレットが温めたの?
────わからない。
わかったのは、記憶のない彼が今愛しているのが私ではなくギムレットということ。
他の女を好きになったからと言って、私が彼を責めることはできないんだ。
・・・・・・これで良かったのではないか。
もうNOCを辞めて、"ミモザ"も終わる。
ジンの記憶の中から完全に消えてしまった方が、お互い新しいスタートを切れるのかもしれない。
最後までジンに寄り添えなかった私の負けだ。
「ミモザさん、これから任務に行かれるんですよね〜?バーボンさんによろしくお伝えくださいっ!」
「・・・何、言ってるの・・・・・・」
何故ここでバーボンが出てくるんだ。
何故よろしく伝えなければならないんだ。
この子の目的はジンに近付くこと?
私からジンを奪うこと?
何の為に組織に入ったの・・・?
目の奥が笑っていない笑顔を向けられて気分が悪い。
まるであの人みたいだ────
ポケットに入れていたスマホが震え、降谷さんから迎えに来たとメッセージが届いた。
しかし、私の負けだと認めたところだがギムレットの本心を聞かずにはいられない。
「ギムレット・・・・・・あなたは誰からの指示でここにいるの?」
お互い真っ直ぐに視線を合わせる。
どちらも逸らすことなく。
やがて彼女から笑顔が消え、はぁ・・・と溜息を吐き呆れた表情に変わった。
「こんな面倒な女のどこがいいんだろ。どう見ても私の方が魅力的なのに・・・。つべこべ言ってないでさっさと消えてくれません?」
突然の彼女の言葉に耳を疑った。
殺意を剥き出しにしている態度に、心底私が邪魔だと言われているようで。