第12章 すれ違い ※
ベッドは占領されているし、同じ空間で一晩過ごすなどまっぴらごめんだ。
今夜はホテルに泊まるとウォッカに伝え、車で移動するため外に出る。
先程まで降っていた雨は止んでいたが夜は一段と寒い。
そんな中、月明かりに照らされている人影がポツンと佇んでいた。
背中の開いた服に丈の短いスカートという薄着で震えている、馬鹿な女────
不覚にも、女の着飾った姿に胸の鼓動がうるさくなって。
露出している白い肌に、ギムレットとは別の苛つきと触れてみたいという欲が混ざり合う。
近付きたい
声が聞きたい
俺を見てほしい
バーボンとの関係を知りたい
俺とお前の関係は・・・・・・
散々、存在を拒否しておいて今更言えるわけがない。
「っ、きゃあっ!?」
「・・・・・・うるせぇ・・・・・・大声出すな」
「すみ、ま・・・せ・・・・・・えっ?な、何で、ジンが・・・?」
「俺がいつどこにいようとお前に関係ないだろ」
振り返ったミモザに叫ばれ咄嗟に口から出た言葉は、またもや拒否するもの。
こんなことを続けていたら俺の前から消えてしまうのではないか。
小さい危機感を持ちつつ、まあ大丈夫だろうと謎の自信もあった。
煙草を吸いながら月を見ていても意識はミモザの方へ向いている。
ただ、それぞれ月を見上げているだけ。
鼓動は変わらずうるさいままだが、それだけで心は満たされた。
邪魔な存在だった女の側が何故こんなに心地良いと思うのか・・・。
「くしゅんっ」
「・・・・・・」
寒空の下、露出していれば身体が冷えて風邪を引くだろう。
誰に見せる為の格好だ?
バーボンか?
ハニートラップのターゲットか?
誰にも見せたくない。
誰にも触れさせたくない。
俺だけに見せろ。
記憶を失う前の恋人が・・・・・・
お前だったら良いのに・・・・・・
ずっと気になっていた。
俺とお前の関係・・・・・・
・・・教えてくれよ────