第12章 すれ違い ※
────抱いていれば思い出す。
それを期待し触れていても、ストレスが溜まるばかりで。
部屋中に響く声に耳が痛む。
挿れる前から相性が良いとはお世辞にも思えなかった。
特定の女を作ったことがない俺の恋人だろ?
どんな風に愛していたんだ?
いくらなんでも魅力に感じる所がなさすぎる。
「ああぁっ!!イ、く・・・イっちゃう・・・んんっ!!」
「チッ・・・・・・」
「ねぇ・・・ジンさんっ、早く・・・挿れてぇ・・・!!」
「うるせーよ・・・・・・今日は指でイっとけ」
昂っていたモノもコイツの声でやる気をなくし、挿れられる状態ではない。
仕方なく指だけで何度も絶頂に導いた。
この女の意識が飛ぶまで・・・・・・何度も。
「やだぁっ・・・挿れて・・・・・・キス、して・・・っ!!」
「いい加減・・・黙ってろ・・・ッ」
「っぐ・・・!んんっ・・・・・・」
静かにさせる為に唇を塞いだが今すぐにでも口を濯ぎたい。
記憶がないとしても、愛していた女を汚い物扱いするというのはどうかと思うのだが。
ギムレットの言っていることが嘘か、上辺だけの恋人関係だったか・・・・・・
────多分、前者だろう。
「ハッ・・・・・・笑えねぇ」
煙草を持つ、ふやけた指を見て自嘲気味に笑う。
ベッドには意識を失った女が横たわっていて、視界に入るたび罪悪感で胸がズキンと傷んだ。
誰なんだよ、俺の頭の中に張り付いている女は。
バーボンとミモザが両想いだと聞いてから行き場のない苛つきと焦り。
別にアイツらがどうなろうと何をしようと興味はない。
ミモザが誰を好きであろうと・・・・・・。
1番苛つくのは、記憶が戻らない自分自身。
暇人女の虚言に乗ってしまうほど、消えた記憶を取り戻したいと焦り始めていた。