第11章 私の居場所
「寒っ・・・・・・」
冬の夜にこの格好は震えるほど寒い。
上着を着たら可愛い服が隠れて意味がないからこのまま来てしまったけど・・・・・・失敗した。
空を見上げると冷たい雨が止み雲もなくなって、綺麗な月に照らされている。
もう一度、ジンと見たかったな・・・・・・。
俺様なジンは意外とロマンチストで月を見るのも嫌いではないらしい。
月を見ながら煙草を吸うジンは絵になって、人を惹きつけるかっこよさがある。
今も部屋で眺めているだろうか・・・。
しばらく見ているうちに、身体の芯まで冷えてきてしまった。
こんな寒い所で何やってるんだろう。
着飾っても見てくれる人は誰もいないし、シャワーを浴びたばかりで寒空の下に立つなんて自ら体調を崩しに来ているようなものだ。
部屋に帰ったら湯船に浸かって温まろうと踵を返した。
「っ、きゃあっ!?」
「・・・・・・うるせぇ・・・・・・大声出すな」
「すみ、ま・・・せ・・・・・・えっ?な、何で、ジンが・・・?」
「俺がいつどこにいようとお前に関係ないだろ」
身体の向きを変えると至近距離に黒い壁があり、思わず叫んでしまった。
見上げると、そこに立っていた不機嫌そうなジンに睨まれていて。
いつからいたのだろうか・・・。
何の音も気配も感じなかった。
「・・・・・・チッ」
面倒臭そうに煙草を咥え、ベンチに腰掛けるジン。
溜息のように煙を吐きながら空に視線を移したので、私も同じように月を見た。
それだけで心が暖かくなった気がする。
ジンと2人きりになるのは久しぶりで、鼓動のテンポが速いけど・・・組織を去る前に会えたことが嬉しくて涙腺が緩んだ。
任務に行った私が帰ってこなくなったら・・・・・・あなたはどうする?
寂しいと思ってくれる?
怒ってくれる?
探してくれる?
ほんの僅かでも、私のことを考えてくれるかな・・・?
ジンのことを諦めたくないのに諦めなければいけない現実。
私がもっと強ければ・・・・・・
自分の力量のなさに嫌気が差した。