第11章 私の居場所
その日の夜───
荷物を纏めるためアジトへ戻ったが、自室で1人ぼーっと動けずにいた。
クローゼットに掛かっている黄色のドレスが眩しい。
このドレスを着たのはジンと初めて繋がった日。
バーでお酒を飲み、しつこい男から守ってくれて。
ホテルのエレベーターでキスをされ軽々とお姫様のように抱いてくれたと思ったら、部屋に着いた途端ジンからの激しい愛を貰った。
私のことを考えて我慢してくれていたけど、それがもどかしくて、切なくて。
自分からも彼を激しく求めた日だ。
暖かくて幸せだった時間・・・・・・
ずっと側にいられると思っていた。
その幸せは瞬く間に崩れ去ってしまったが。
もう二度と、愛してもらえる日は来ないのだろうか。
もう二度と、愛してはいけないのだろうか。
ここに私の居場所はない。
ミモザは必要ない。
本来の目的は果たせたのに、何とも不甲斐ない終わり方だ。
このドレスは置いていこう。
持っていても着る日は来ないのだから。
無造作に山積みにした服を漁り選んだのは、背中が大きく開いたデザインのトップスとタイトスカート。
最後に着てみたくなり、袖を通して鏡の前に立つ。
・・・・・・うん、可愛い。
でもあの人に見てもらわなければ意味がない。
可愛いと思ってもらいたい。
触れたいと思ってもらいたい。
案外、自分はあざとい女なのかもしれないと今更ながらに気が付いた。
組織を離れたら、この服は着なくなる。
見せる人はいないが、最後は思い切り着飾ったミモザで終わりたい。
そう思ったら、うんと綺麗になりたくなって。
まずは身に付けているものを全て脱ぎ、浴室へ向かった。