第11章 私の居場所
「バーボン・・・・・・ここ・・・・・・」
「先に行っていてくれ」
「!!」
「久しぶりに顔見せてやれよ。アイツはいつもお前の心配をしてるぞ。・・・もちろん、上司としてな」
車が到着したのは任務先・・・ではなく、警視庁だった。
運転していた彼は、バーボンから降谷零に切り替わっていて。
スーツに着替えたのはここに来る為。
組織に潜入してから一度しか来ていない。
降谷さんの言う、"心配しているアイツ"とは恐らく風見さんのことだろう。
顔も見せない、連絡もしないなんて・・・最低な部下だ。
先に車を降ろされたが足が重くて動かない。
黒の組織のジンを・・・本気で愛してしまった私が来て良い場所ではないと思う。
どんな顔をして風見さんに会えばいいの・・・。
先程よりも雨が強くなってきて髪が湿っていく。
「風邪引くぞ、早く入れ」
「あっ・・・・・・」
腕を引かれ見上げた先には、公安用のスーツに着替えた降谷さん。
1人では歩き出さない私を離さず、ずっと引っ張ってくれた。
「降谷さん、お疲れ様です」
「お疲れ。・・・なに隠れてるんだよ・・・ほら、堂々としろ」
「っ・・・・・・か、風見さん・・・・・・ご無沙汰して、おります・・・・・・。すみません、あの・・・・・・ひゃっ!」
顔を合わせづらくて降谷さんの真後ろに立っていると、早々に風見さんの正面に出されて。
しかし視線は合わせられず、とにかく音信不通について謝ろうと思った時、力強く抱きしめられた。
熱血なイメージがある風見さんだけど涼しくて清潔感のある香り。
正義感のある彼にピッタリだ。
組織での居場所がわからなくなってきた今、本来の場所に帰ってきたのだなと思わせてくれる。
「・・・・・・報連相は基本だ。どこへ行っても忘れるな、馬鹿野郎」
「・・・ごめん・・・なさい・・・っ」
震えている彼の声に私の涙腺も緩んできて。
心配してくれていたことも知らず、自分のことしか考えていなかった。
私からの連絡を待っていてくれたのに・・・・・・こんな部下で本当にごめんなさい・・・────