第11章 私の居場所
例えそれが事実であっても、隠す必要がどこにある?
バーボンも好意を示しているのだから自分も同じ気持ちだと言えば済む話だろう。
・・・そんな場面は見たくも聞きたくもないが。
「ミモザさん優しいですからねぇ・・・。気を遣わなくていいのに・・・」
「・・・・・・好きな男を拒否する女のどこが優しいんだよ。迷惑そうな顔してるじゃねぇか」
そう。
アイツはいつも目を伏せて不満そうな、迷惑そうな顔で。
暇人女と対照的で笑顔など見たことがない。
見た目はまあ・・・それなりに秀でているのだから、少しは女らしく愛嬌を振りまけば良いものを。
「違うんですよー・・・ミモザさん、私の為に隠してくれてるんです」
「お前に気を遣って何の得がある」
「もー!ジンさん!真剣に話すのでちゃんと聞いてくださいっ」
キャンキャンと子犬のように鳴くこの女が鬱陶しくて堪らない。
犬の方が何倍もマシだ。
ミモザの性格ならコイツに遠慮するのも納得できるが、一体どんな理由があるというのか。
「・・・・・・チッ」
頬を染めて上目遣いでこちらを見ている。
聞けと言っておきながら、なかなか口を開かない女に舌打ちをした。
・・・・・・あの2人が両想い?
よく任務で組んでいるのはそのせいか?
疾しいことでもしてるのかよ。
しかし、アイツはハニートラップもやっていると聞く。
好きな女が他の男に抱かれても平気なクズとは・・・。
寝取られ好きなのかと疑ってしまう。
───俺の側にいれば・・・・・・
俺の側にいれば・・・・・・?
散々、必要ないと言っておいて何をよぎった・・・?
「ジンさん・・・・・・記憶が戻るのを待ってたんですけど・・・もう言っちゃいますね」
「・・・何だよ」
「ジンさんと私・・・・・・本当は恋人なんです・・・。あの日、ジンさんは私を守る為に怪我したんです。言い出せなくてごめんなさい・・・」
目の前が真っ白になった。
確かにこの1年、常に俺の近くにいたのはコイツだ。
1年前は、自分も怪我をしていたのに足を引き摺りながら俺の元へ現れていて。
好意を向けられていたのは恋人だったから・・・。
では何故、浮かんでくるのはアイツの顔なのだろう。