第10章 あなたは誰?
「あれ・・・いない・・・・・・」
翌日も重い身体を起こし、いつもの時間に病室を訪れたがジンの姿はなかった。
どこに行ったんだろう。
慌てて医務室へ飛び込んだ。
「あのっ・・・!ジンが病室にいないんですけど・・・」
「あ、はい・・・少し外に出ています」
「え・・・もう外出して大丈夫なんですか?」
「いえ・・・・・・煙草を吸いたい、と・・・」
「・・・あぁ・・・なるほど・・・」
言うことを聞かず出て行ってしまった・・・と。
困惑した表情の医療班を不憫に思った。
ベビースモーカーの彼にとって禁煙は、死ぬことと変わりはないのだろう。
今までも私が看病に来ていない時に吸っていたのかもしれない。
体調不良でも命と同じくらい必要不可欠なものなんだ。
私よりも・・・・・・必要なんだ・・・・・・。
ジンは、アジトから少し離れたベンチに座っていて。
遠くを見つめながら煙草を吸っていた。
────かっこいい・・・・・・。
長い髪がサラサラと風になびいている。
煙草を持つ細長い指
咥える濡れた唇
顎を指で撫でる仕草も加わり、大人の色気がダダ漏れだ。
もう1ヶ月も触れていない。
話をするのも難しくて・・・何より私の記憶がないのだから当然だけど。
遠くから見ているだけなら・・・許してもらえるかな・・・。
素の彼を見ていたくて少しの間、目に焼き付けるようにジンの横顔を眺めた。