第10章 あなたは誰?
───翌日からウォッカと交代でジンの看病をすることになった。
「お前は必要ない。俺の前に現れるな」と罵声を浴びながらも、1日でも早く良くなってほしくて医療班を手伝った。
私を見ると顔を顰め、少しでも近付けば殺意を剥き出しにして睨まれる。
それでも、自分ではどうにもならない身体を任せるしかないようだった。
しかし・・・さすがジン。
大怪我をしたにも関わらず、手術後すぐに目覚め回復も早い。
尋常ではない驚異的な身体の持ち主だ。
「おい、終わったらさっさと離れろ。無駄に触るな」
「無駄って・・・無駄なことはしていません」
「だいたい何故お前なんだ。暇なのかよ。
・・・まあ、見るからに使えなそうだな」
身体の回復と共に私のことも思い出してくれたら・・・と僅かな希望を抱いていたが、1ヶ月経ってもそれは見えなかった──
あなたは誰なの?
本当のあなたはどこにいるの・・・?
今の姿が本当のあなたなの?
・・・何度考えてもわからない。
看病をして必要最低限しか声を掛けられなくて。
近付いたら殺意を向けられる。
何故、そこまで私を嫌うのか。
このままだとジンの怪我が治ったら殺されるのでは・・・・・・と怯えながら1日を終えるため、身体は全く休まらなかった。
「では・・・部屋に戻りますね。何かあったら連絡ください」
「・・・・・・」
返事はないし連絡も来たことはない。
私のことを鬱陶しいと思っているのだから当然だけど。
私を呼ぶくらいなら苦しい方がマシだ・・・とか思っていそう。
ねぇ、ジン。
私はあなたの側にいない方が良いのかな。
あなたが必要ないと言うのなら・・・・・・
私がここにいる理由がなくなってしまうよ。