第10章 あなたは誰?
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「1年分の記憶が・・・ない・・・・・・?」
医療班の人はジンに文句を言われながらも、様々な検査をしてくれて。
最終的に聞かされた結果は、"ここ1年間の記憶を失っている"ということだった。
「はい・・・。理由は不明ですが・・・忘れたいことや引っ掛かる何かがあったのでしょうか・・・」
「そんな・・・・・・!」
頭を打ち、大出血したジン。
全てを忘れてしまう記憶喪失なら100歩譲って理解できる。
それが、全てではなく1年間だけ・・・?
1年前は私が組織に潜入した頃。
だから私のことだけわからなかったんだ。
ジンの記憶から・・・私が消えた・・・────
私を好きだと、愛してると言ってくれたことも・・・側にいろと言ってくれたことも・・・一晩中、抱き合ったことも・・・・・・
彼の中から消えてしまった・・・。
ジンは私のことを忘れたかったの?
・・・いや、そんなはずない。
あんなに甘く激しく愛してくれて。
一緒に暮らすつもりだったんだ。
忘れてしまうだなんて・・・・・・嘘でしょ?
「ミモザ・・・・・・とりあえず、様子を見ましょう。今は混乱しているだけかもしれないわ。顔を見せていたら思い出す可能性もあるし・・・」
「・・・はい。まずは怪我をしっかり治した方がいいですよね!あまり・・・怒らせないようにします・・・」
辛い。
辛いけど何故か明るく振る舞うことができた。
ベルモットとウォッカのことは覚えているし・・・命が助かったのだから・・・・・・生きていてくれただけでも良かったと言い聞かせないと。
そう思い込まないと狂ってしまいそうで。
ベルモットの言う通り、今は混乱しているだけ・・・と思いたかった。
すぐに記憶が戻ると、信じたかった。