第10章 あなたは誰?
「触るな」
「・・・・・・・・・え?」
冷たく鋭い目付きで私を睨むジン。
この状態でなかったら殺されていたかもしれないと思うほどに恐怖を感じた。
その目付きは・・・私に向けているの・・・?
「ジン・・・あの・・・っ」
「チッ・・・ウォッカ、てめぇの女を連れてくるな」
──その言葉・・・いつだったか聞いたことがある。
ジンと初めて会った時・・・・・・彼がバーボンに言った言葉だ。
ウォッカの女?
どういうこと?
状況が飲み込めない・・・────
「あ、兄貴・・・?ミモザですぜ・・・?兄貴の・・・」
「は?ミモザ?誰だよ・・・新入りか?」
胸をナイフで抉られているようだ。
本気で言っているのだろうか。
冗談だよね?
からかっているだけだよね?
「おい、女。二度と俺に気安く触るな」
現実・・・──────?
ジンの視線に耐えられず、ベッドから離れ後ろを向いた。
それでもまだ突き刺さる視線。
痛い・・・・・・痛いよ・・・・・・。
「連れてきたわよ!・・・・・・え・・・何か・・・あったの・・・?」
医療班を連れて戻ってきたベルモットは、私たちの異変にすぐ気が付いたようだ。
「ベルモット、新入りをよく躾けておけ」
「え、新入り・・・?ギムレット・・・のこと?」
「ギムレット?はあ・・・コイツの他にもいるのか・・・」
心底、面倒そうに溜息を吐かれ、私の心はボロボロになった。
初対面の時から私に甘かったジン。
こんなに凍てついた言葉を浴びせられたことは、一度たりともない。
私だけを忘れてしまったのだろうか。
ジンの目が覚めて安心したのも束の間、信じたくないことが起きてしまった。