第10章 あなたは誰?
ジンがいる部屋に行くと、彼が寝ているベッドの前にウォッカが立ち竦んでいた。
手術中、ずっと見守ってくれていたらしい。
2人の元へゆっくりと近付き、様子を伺う。
頭に厚く包帯を巻いたジンは目を閉じて小さく呼吸をしていた。
「ジン・・・・・・!」
思わず駆け寄り、点滴を繋いでいない方の手を握った。
──温かい・・・・・・生きてる・・・・・・!
「ジン・・・・・・ごめん、なさいっ・・・・・・ありがとう・・・ございます・・・!!」
寝ているジンに何度も謝罪とお礼を繰り返す。
涙が頬を伝い、彼の手に落ちる。
生きていてくれて良かった・・・。
本当に良かった・・・!
ジンの顔を見ると「お前を置いていくわけねぇだろ」という声が聞こえてきそうだ。
「一命は取り留めたのね・・・」
「あぁ・・・兄貴は簡単に死にはしねぇよ」
先程ベルモットに言われた言葉と同じことを言っているウォッカ。
ジンは誰から見ても強いんだ。
でも、表に出していないジンは壊れそうなほど脆くて、支えていないと消えてしまうような弱い人間だと思う。
その姿を私にだけ見せてくれる。
いつも守ってくれてありがとう・・・
これからは私にも守らせてね・・・ジン・・・────
ジンの左手をきゅっと包み、そっと唇を押し当てた。
「ん・・・・・・」
「っ!!ジン!!」
「え・・・兄貴!?」
包んだ左手がピクッと動いて。
すぐに確認すると、眉間に皺を寄せ眩しそうに深緑の瞳を見せてくれた。
まだ意識がはっきりしていないようだが、戻ってきてくれたことに感極まる。
「医療班を呼んでくるわね!」
そう言うと部屋を飛び出したベルモット。
残った私とウォッカは涙目でジンを見つめた。
「ジン・・・・・・」
「・・・・・・」
私に名前を呼ばれたジンは、ゆっくりこちらに視線を合わせる。
抱きしめたい・・・・・・けど、身体が痛むだろうか・・・。
生きていることを実感したいが今は触れるだけにしよう・・・と彼の頬に手を添えた。