第10章 あなたは誰?
『ミモザ・・・・・・入るわよ』
「・・・・・・」
どのくらい経ったのだろうか。
あれから眠ることも動くこともできず、只々流れてくる涙でシーツを濡らしていた。
恐怖や悲しみ、怒り・・・・・・様々な感情が入り混じり、混乱状態が続いていて。
そんな中でも思い出すのは最後に見たジンの表情。
私に心配させないように優しく微笑んでくれたジンの顔が頭から離れない。
痛くて・・・辛くて・・・苦しかったはずなのに・・・・・・。
自分が傷付いても、私の心と身体を命懸けで守ってくれて。
大切に想ってくれていることを痛いほど実感した。
それなのに私は・・・
守ってもらってばかりで、彼の為に何もしてあげられない。
「ミモザ、少しで良いから食事と水分を摂りなさい」
「あ・・・・・・ベルモット・・・」
いつ部屋に入ってきたのだろうか。
扉を叩く音も開ける音も聞こえなかった。
声を掛けられハッとした私を見たベルモットは深い溜息を吐いた。
「・・・・・・あなたも、倒れたら迷惑よ?ジンが目を覚ました時に側にいてあげないと・・・ミモザはどこだって煩いわよ、きっと」
「・・・ごめ・・・・・・なさ、い・・・・・・っ。ジンを・・・・・・守れなく・・・って・・・・・・」
長時間流している涙は枯れることなく、涙腺は既に崩壊し止め処なく次から次へと溢れてくる。
何故、私はここにいるの・・・。
何故、医務室に運ばれたのが私ではなくジンなの・・・。
自分の無力さが情けなくて・・・悔しくて・・・。
「・・・ジンは自分よりもミモザを守りたかったのよ。あなたに生きて笑っていてほしいはず・・・。それに・・・・・・あれくらいで死ぬような男じゃないわ。信じて待ってましょ」
「ぅ・・・っ、はい・・・・・・」
ベルモットに抱きしめられ子どものように泣き喚く。
手術を頑張っているジンの近くに行きたいが、どうしても怖くて動けない。
あなたを失ってしまったら・・・と、怖くて怖くて堪らないの・・・。