第9章 渡さない ※
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クソ・・・こんなはずでは・・・────
「ジンさん!ありがとうございましたっ!重かったですよね・・・すみません」
「・・・・・・」
医療班の奴らによれば、女の怪我は足首の捻挫と脇腹の打撲で、全治1ヶ月ほど。
これくらいの怪我で済み、何の弊害もなく連れ出せたのは運が良かった。
薄暗く隅の方は見えにくかった倉庫内。
しかし、視力の良いミモザは瞬時にこの女を見つけ走り出した。
名前を呼び怒鳴ったがアイツは止まることなく女の元へ。
もしもあの時、陰に潜んでいる奴がいたら・・・格好の的だっただろう。
俺がその立場なら迷わず撃っている。
加えて人の気も知らず女を抱きしめているのを見て、大人気ない嫉妬をしてしまった。
ミモザの前では・・・例えいなかったとしても、自ら他の女に触れるなどヘドが出る。
ただ俺だけを見てほしくて・・・俺だけを想ってほしくて・・・それだけの理由でこの女に触れた。
後部座席に乗ったのは、女が腹が痛いと言って離れなかったのを利用しただけで。
「バーボンの車に乗る」と言おうとした声に目が覚めたが・・・時すでに遅し。
2人きりになったら好きなだけ甘やかそうという想いも虚しく、拒否されてしまった。
何やってるんだ、俺は・・・。
「兄貴、お待たせしやした」
「ああ・・・・・・ッ!」
"ミモザを連れて医務室に来い"
そうウォッカに連絡をし、2人が来るのを出入り口で待っていた。
謝るなら早い方が良い。
ウォッカの後ろにミモザがいるものだと疑わず振り返った。
「ギムレット、怪我の具合はいかがですか?」
「貴様・・・・・・」
目の前にいたのは今1番顔を見たくない野郎。
俺の頭の中の全てを支配しているミモザは、距離を取り控えめにこちらの様子を伺っていた。