第9章 渡さない ※
「行くぞ」
「はい・・・!」
後部座席の扉が開かれ車から降りる。
降りた後、ジンに軽く手を引かれたが動きにくくなってしまうのでやんわりと離した。
「・・・・・・」
目を細めて睨むように見下ろされている。
見て見ぬふりをして・・・「ごめんなさい」と心の中で謝罪した。
ジンを先頭に周囲を警戒しながら倉庫まで進むと、扉が僅かに開いていて。
3人で目配せをして息を潜め拳銃を構える。
バンッ・・・────
ジンが勢いよく扉を開けると薄暗くカビ臭い中、隅の方で倒れているギムレットが目に入った。
「ギムレット・・・!!」
「お・・・い、ミモザッ!!」
ジンの許可なく走り出したせいで怒鳴られたが、ギムレットの元へ一目散に駆け寄った。
「ギムレット!ギムレット!!」
目を閉じて横たわっている彼女の身体を起こし名前を呼び続けると、瞼がゆっくり上がり綺麗な瞳と視線が合う。
「・・・・・・ミモザ・・・さん?」
「はぁ・・・よかった・・・・・・」
眠らされていただけなのか目立った傷もない。
脱力するほど安堵して、自分に凭れ掛かっているギムレットをふわりと抱きしめた。
震える彼女から、ゴクッと息を飲む音が聞こえて。
1人で怖かっただろう。
遅くなってごめんね・・・無事でよかった・・・。
「・・・・・・車を回せ」
「へい」
指示をするジンの声でハッとし、まだ完全には安心できないことに気が付いた。
「ギムレット、歩ける?掴まって」
「はい・・・ありがとうございます・・・つッ・・・!」
「痛い?足・・・怪我してるの?」
「さっ・・・き、投げられた時に・・・捻って・・・」
靴下を下げると足首が腫れて青痣ができている。
背中に乗せ背負おうと彼女の腕を自分の肩に掛けた。
「ギムレット、ウォッカが来たら・・・・・・!」
「さっさとズラかるぞ。乗り込め」
──────・・・え?
「ジ・・・ジンさん・・・!」
「ミモザ、付いてこいよ」
「っ・・・は・・・い・・・」
たった今、私の側で座っていたギムレットがジンによって横抱きで運ばれている。
声を掛けてくれた時には既に私に背を向けていて。
頭の整理が追い付かなかった・・・──。