第9章 渡さない ※
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「帝丹小学校裏の倉庫に1人でいるんですかい?」
「ああ・・・。ミモザに連絡が来た時は他に誰もいなかったようだ」
アジトの外で待機してくれていたウォッカの運転でギムレットの元へ向かう。
小学校の近くだなんて・・・子どもたちに被害が及ばなければ良いのだが。
幸い、教室で授業中なのか校庭や学校周辺に子どもの姿はない。
素早くギムレットを助け出して撤収しなければ、と再び焦り始めた。
「あ・・・」
「どうした」
「・・・いえ、何でも・・・」
小学校のフェンス越しに見慣れた車が駐車してあるのが見える。
RX-7・・・・・・バーボンの車だ。
車内には彼の姿が見えるが・・・待つように言われたのだろうか。
「兄貴、バーボンの車ですぜ」
「ああ。そこに停めろ」
5分後、目的地に到着しバーボンから距離を取って車を停めると彼が外へ出てきた。
「すぐに済む」
それだけ言うと1人車を降りたジン。
2人だけで話すのだろうと彼らのやりとりを窓から眺めた───
「出入りした人物はいませんが、何度かこちらを気にしている男が通りました。眼鏡を掛けた背の低い細身の男です」
「倉庫に近づかないよう見張っていろ。合図をするまでこちらには来るな」
「はあ・・・・・・了解」
僅かに聞こえた会話。
眼鏡を掛けていて背が低めで細身・・・・・・男性スタッフの外見と一致する。
周りを見渡すが、今の所そのような人物は見当たらなくて。
犯人が来る前に早く突入したくてソワソワしてしまう。
「女の為に必死な兄貴・・・見たことねぇ」
「えっ・・・」
同じく窓から眺めるウォッカの呟きに思わず声を発してしまった。
私からは落ち着いているように見えるが・・・彼の目には必死なジンが映っているらしい。
長年、ジンの隣にいるウォッカに言われるのは格別で嬉しいと思う反面・・・・・・彼にとって1番の"弱味"になってしまっていることに危機感を感じた。