第9章 渡さない ※
ミモザの後ろ姿を見送った後、バーボンの番号を表示し通話ボタンを押す。
関わらせたくないと思ったそばからアイツに協力を仰ぐはめになるとは・・・。
そもそも、あの騒がしくて図々しい女を助ける必要がどこにある?
面倒な奴が増えるだけじゃねぇか。
どこのどいつか知らないが簡単に捕まりやがって・・・。
しかし・・・ミモザに頭を下げて懇願されたら断れる訳がない。
1人で行かせるのは昨日だけでこりごりだ。
──『はい』
スマホから、いけ好かない声がする。
「あの女はどこだ」
『・・・ギムレットのことですよね。発信機によると帝丹小学校裏の倉庫を指しているので向かっていますが・・・。ジンに連絡があったんですか?』
「今からミモザと向かう。お前は余計なことはするな」
用件だけを伝え、バーボンからの返事を待たずに通話を切った。
アイツがあの女から目を離さずにいれば、こんな面倒なことに巻き込まれずに済んだのだが・・・。
扉を開けると着替えを済ませたミモザが息を切らして戻ってきた。
「ジン・・・ありがとうございます。よろしくお願いします・・・!」
「礼は終わってからたっぷりと貰ってやる」
「えっ・・・あ、はい・・・・・・お手柔らかに・・・」
"礼"の意味を理解したのか顔が瞬時に赤く染まる。
抱けねぇ時にそんな顔するなよ・・・。
ミモザの言動がいちいち刺さってくるため、落ち着く暇がない。
「いいか?危険だと察したらすぐ引け。お前の命を削ることは許さない」
「・・・・・・はい」
静かに頷くミモザの唇に触れるだけのキスを落とす。
益々染まった顔に満足し、印の付いた顎をなぞりながら外へ歩を進めた。