第2章 潜入
潜入してからは、ほぼ毎日バーボンに付いて任務を遂行した。
夜のビルに忍び込んでパソコンから情報を抜き取ったり・・・
カップルとしてバーで聞き込みをしたり・・・
ある時は、バーボンがターゲットにハニートラップまがいなことをしているのを陰で見ていたり・・・
それらを1ヶ月続けているうちにだいぶ慣れてきて、情報収集も自分なりにスムーズに行えるようになった。
彼が私以外の女性の身体を触りながら口説いている姿を見るのは、吐き気を催すほど辛かったが・・・。
「うん、さすが覚えが早いですね」
「・・・ありがとうございます」
バーボンはいつもニッコリ笑って褒めてくれるけど、全く心が躍らない。
雰囲気は優しくて女性の扱いがかなり上手いが、感じるオーラは冷たくて。
これなら降谷さんにドヤされた方がマシだ。
その張り付けた笑顔を・・・仮面を壊したくて堪らなかった。
任務を終え彼の愛車RX-7に乗り込もうとした時、走ってきたバイクが横に停まった。
ハーレーダビッドソンに乗った黒のライダースーツを着た女がヘルメットを外すと、ベルモットだとすぐにわかった。
「あら、バーボン。可愛い子連れてるじゃない」
「ベルモット、お疲れさまです。えぇ、拾ってきました」
「あなたの好きそうなタイプね?」
「おや、ご存知なかったですか?僕のタイプはモデル体型で色気のある女性ですよ」
バーボンの言葉に胸がズキッと傷む。
わかってる。NOCだとバレないためだって。
いや、本当に彼のタイプなのかもしれないが、私とは完全にかけ離れている。
まさにモデル体型で色気のあるベルモットに言うのは・・・彼女を口説いているみたいじゃないか。
「少なくとも・・・彼女はあなたに好意があるような目をしてるわよ?バーボン」
「っ・・・!」
「そうなんですか?すみません、気持ちにお応えできなくて・・・」
「いえ・・・・・・勘違いですよ」
好き勝手言われてその都度落ち込んでいては、この先続けられないと思いこちらも強気に出る。
私が言葉を返した瞬間、バーボンの眉間に皺が入った気がした。