第9章 渡さない ※
「ギムレットが攫われたので行ってきます!!」
ちょうどジンが身体を動かした所をすり抜け、床に落としたワンピースを身にまとう。
やるべきことは自室に戻り黒のボディスーツに着替え拳銃を持って、それから・・・・・・バーボンに連絡。
とりあえず一刻も早く出なければ・・・と焦っている私の前にバスローブを羽織ったジンが立ちはだかった。
「まずお前が落ち着け。場所はどこだと言っていたんだ?」
「それが・・・わからないみたいなんですけど・・・念の為にバーボンが発信機を持たせてくれたと言っていたので確認します!」
「は・・・」
バーボンの名前を発するとジンの表情は瞬く間にドス黒くなって。
焦りすぎて墓穴を掘ってしまったかもしれない・・・と冷や汗が流れる。
射るような眼差しから逃げるように視線を泳がせた。
しかも彼にとってギムレットは、攫われようが殺されようがどうでもいい存在だろう。
私も昨日の今日で彼女との信頼関係はできていないのだが・・・せっかくできた後輩を見捨てられない。
しかし、愛し合っているジンとの仲を悪化させたくないのも事実で。
「ジン・・・すみません・・・。ギムレットを・・・・・・助けたいです。力を貸してください・・・!」
私に鋭い視線を向け続ける彼に頭を下げる。
この我儘は許されるのか・・・。
ジンからしたら、使えない新入りを助けても何のメリットもないのに────
正直、期待はしていない。
断られたら1人で行くだけだ。
返事を待つ数秒でも惜しく、ギムレットのことを思うと気が気でなかった。
「・・・ミモザ」
「はい・・・」
「あとで覚えておけよ」
そう言って、いつもの服装に着替えながらウォッカを呼ぶジンを呆然と見つめてしまった。
手伝ってくれるの・・・?
私の一言で・・・。
「・・・おい。その格好で行く気じゃねぇだろうな?」
「も、もちろん!着替えてきます!!」
「ミモザ。・・・・・・バーボンには俺から話す。お前は俺のことだけを見ていろ」
──何それ・・・・・・ずるい。
彼からの言葉には愛が詰まっていて。
いつも私の味方をしてくれて。
助けてくれて・・・。
ジンのことしか見えてないよ────