第9章 渡さない ※
ブー・・・ブー・・・ブー・・・
「!!」
再びスマホが鳴り、画面に表示されている名前も先程と同じギムレット。
さすがに出ないとまずいだろうか。
「すみません・・・・・・出ますね・・・」
「・・・・・・チッ」
部屋の外で話そうと起き上がろうとしたが、舌打ちをするジンに抱きしめられ動けない。
「あの・・・・・・外で話してきていいですか?」
「・・・・・・」
尋ねても無言で顔を隠していて。
首筋に彼の息が掛かり、くすぐったくて変な声が出そうになる。
「・・・ジン?外で・・・・・・もう、ここで話しますね?」
「・・・・・・」
どうしたものか。
動けない上に返事もない。
このままではまた切れてしまうので、仕方なく通話ボタンを押す。
──その間もジンは私から離れなかった。
「・・・はい」
『ミモザさん!!すみません・・・わ、私・・・っ』
「ギムレット?どうしたの?」
電話の向こうから聞こえる声は小さくて震えていて、慌てている様子だ。
『だっ・・・誰かに・・・連れて、かれ、て・・・』
「ギムレット・・・落ち着いて。そこには1人でいるの?どんな場所かわかる?」
『1人・・・です・・・。場所・・・・・・・・・あ。バ、バーボンさん・・・に・・・発信機・・・、念の為にっ・・・て・・・うぅっ・・・ミモザ、さん・・・』
そこまで言うと嗚咽を漏らし始めたギムレット。
弱々しく助けを求める彼女に胸がギュッと締め付けられる。
もしかして、男性スタッフに攫われた・・・?
昨日の出来事をバーボンに相談して発信機を持たされたということか。
「ギムレット、必ず助けに行くから・・・動かず待ってて!!」
『・・・は、い・・・・・・お願い・・・します・・・っ』
通話を繋いでいたかったがスマホの電池の消費を防ぐ為に切ることにした。
電話を掛けられたということは・・・その場に犯人はいなくて所持品も取られていない。
拘束もされていないだろう。
犯人が戻ってくる前に見つけ出したい。
急いでバーボンに連絡を取って助けに行かなければ・・・。