第8章 可愛い後輩
「どうされました?声が・・・聞こえて・・・」
「っ・・・・・・」
「・・・問題ない」
大きい声が聞こえて駆け付けたのか、バーボンの姿が・・・───
密着している私とジンを見て言葉を飲み込んでいる。
昨夜はメッセージを無視してしまったが、この現状を目の当たりにしたら言わなくても理解するだろう。
ジンはバーボンを睨みながら私の腰を更に引き寄せて。
それに気付いたバーボンもジンを睨むような素振りを見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「問題がないなら良いのですが・・・おや?あなたは・・・?」
「あ!ギムレットと申しますっ!よろしくお願いします!今はモデルとして潜入していて・・・」
「バーボン、コイツを乗せていけ」
「はい?」
何を言い出したかと思えば、バーボンにギムレットを撮影場所まで送っていけ・・・と。
彼女の言動に気味が悪いと引いてしまったが、ギムレットと組んでいるのは私だ。
バーボンに任せるわけにはいかない。
「ジン、ギムレットのことは私が頼まれたので行ってきます」
「俺は許可していない。勝手な行動をとるな。俺の側にいろと言っただろ?」
バーボンへの当てつけだろうか・・・。
ジンは最初から変わらず、私の側にいようとしてくれる。
私への想いの大きさをひしひしと感じられてくすぐったい。
しかし・・・私を守ってくれる嬉しさもありつつ、 バーボンからの視線が痛いほど刺さっていて複雑な感情だ。
「私、ジンさんに送ってほし・・・」
「さっさと俺の前から消えろ」
「ジ・・・ジン!」
カチャ・・・っと、ギムレットの額に拳銃が当てられて。
これ以上ジンの機嫌を損ねたら問答無用で撃たれてしまう。
銃を握っている左手を抑えて彼を止めた。
「ギムレット、今日はバーボンに送迎してもらって。よ・・・よろしくお願いします・・・」
ジンの手がピクリと反応したのがわかったが、抱き寄せられたままバーボンに頭を下げる。
はあっと、わざとらしく溜息を吐かれて・・・
「事情は後ほど伺いますので・・・行きましょう、ギムレット」
「・・・はい」
予想外に駄々を捏ねず去ってくれたことでこの場は収まったが・・・
未だ銃を固く握りしめている彼をどうにかしなければ────