第1章 新型立体機動装置【ハンジ】*
「、考え事してる?」
思い出に耽っていると、ふとハンジさんに声をかけられた。
どうやら手の力が弱まっていたらしい。
「疲れてるなら無理にしてくれなくても平気だよ。」
「いえ、昔の事を思い出してただけです。よくハンジさんの部屋に呼ばれて、夜な夜なマッサージして帰ってたなって。」
「そうだったね。もう10年くらい前か。」
でも付き合い始めてからはハンジさんの部屋にそのまま泊まるようになった。
私がいる日は研究を止めて一緒にベッドに眠ってくれる。
そこで思いっきりハンジさんの匂いを堪能していた。
「そう考えたら、私がしてる事って10年間変化無いのかな…」
「え?そんな事ないでしょ。」
ぐるりと上半身を後ろに向け、私の腕を引き唇が重なる。
ちゅっ、と視界いっぱいのハンジさんと私の間からリップ音がした。
「10年前はキスなんてしなかったよ。」
私は目を見開いた。
そっか、そうだ。私は貴方の恋人にしてもらえたんだ。
あの時みたいに片思いじゃない。
どんなにつらくても貴方がいたから死なずに来れた。
こんなにも大きな変化があったじゃないか。
ハンジさんの首に腕を回して、私からも唇を重ねた。
お互いが食べ合うようなキスは水音を含み、私たちの部屋に響く。
熱を宿した隻眼が、私だけを見つめている。
子宮が疼くがハンジさんは疲れている。今は私が癒してあげるんだ。
「あ…マッサージ……」
「…うん。」
「終わったら、ね。」
「うん。」
そう言って、元の体勢へと戻らせた。
ハンジさんはデスクワークも多いため、読み書きする姿勢でとても首に負担がかかっている。
だからハンジさんは特に首周りの筋肉も解した方が良い。
今度は僧帽筋の辺りを全部の指で優しく揉んでいった。
「、気持ちいい…」
「っ…うん、良かった。」
「」
「なに…?ハンジさん…」
「背中と腰もしてほしい…」
はは、そんな事だろうと思った。
ハンジさんは急にスイッチが入るから、ちょっとだけ期待しちゃった。
「もちろん良いですよ。」と言って、私たちはベッドへ移動した。