第1章 新型立体機動装置【ハンジ】*
「いや〜、いい感じに仕上がったね!」
本日の業務を終え、最近共同となった私たちの部屋に戻った。
恋人のハンジさんは新型になった立体機動装置を今日初めて着用し、それをとても気に入っている。
「明日からはこれを着て訓練できるんですね。」
「そうだね。訓練し直しになるかな〜…」
窓にもたれて、自分の肩を揉みながら「はぁ」とため息をつくと少し項垂れている。
最近は“とても”なんて言葉じゃ形容し難いほど忙しい。
捕虜という名の協力者達のおかげで、私たちの住むパラディ島には無かった様々な技術をこれでもかと言うほど提供してもらっている。
ハンジさんは元々そのような装置などに興味があった。
その上、人へ愛想良く振る舞える所や礼儀を重んじる性格で団長という立場もあり、協力者達との交流を一番積極的に行っている。
今では彼らからも信頼されている様だった。
脱いだ二人分の兵団マントをハンガーにかけて、少し休憩するだろうと思い紅茶を淹れテーブルへと持って行く。
その間ハンジさんはずっと外を見ながら首や肩を回していた。
「マッサージしましょうか?」
「いいの?お願いしようかな。」
ソファーに座るよう促して、私はその背後に立ち肩にかかるハンジさんの髪を梳かす。
今度は気持ち良さそうにため息をついて、さっき私が淹れた紅茶を一口、二口と口へ運んでいる。
「のマッサージは人類一気持ち良いからね。」
「大袈裟ですよ。」
肩甲骨の始まりより少し内側を親指で押し上げるように揉むと、ゴリゴリした何かがある。私はいつもそれを重点的に刺激している。
「くぅ〜…これこれぇ…!眼精疲労にも効くんだよ…!」
「あははっ、嬉しいなぁ」
マッサージは訓練兵になる前からの特技で、調査兵になってからも先輩達にパシリのように使わされていたが、それも今では良い思い出だ。
私の手で喜ばない人はいなかったから。
もちろんハンジさんはこの手に惚れ込んでいた先輩の一人だ。
交際する前なんかは、マッサージの為にハンジさんの自室に呼び出されてたなぁ。
ドキドキが止まらなくて、ハンジさんの肩や首に触れていた自分の手を誰にもバレないように嗅いでたっけ。
懐かしいな。もう10年も前の話だ。