第3章 好機な誘惑【エルヴィン】*
ちょっと待って。
励ましてくれるのは有難いけど、私は何故抱きしめられてるの?
昨夜、私は余計な事を言ってしまってそういう関係を続けることになってしまったの?
フラッシュバックする昨夜のエルヴィンの男の顔は、今も身体を疼かせてドキドキしてしまう。
まともに顔も見れないし、感じる体温も全部が熱を呼び覚ます。
「か、介抱してくれてありがとう…。でも、もう貴方に迷惑はかけないから離して…?昨日の事はお互い口外できないし、今まで通りに…」
「離したくない、と言ったらどうする?」
予想外の言葉に驚き、振り返った。
真剣な彼の碧眼に吸い込まれそうだった。
「へっ…!?と言うか、タメ口は許した覚えは…!」
「昨夜、君から言ったんじゃないか。」
「覚えてないよっ…!すごく断片的なの…!」
「なら、何なら覚えている?」
「ぇ…私から誘ったのと…エルヴィンと…シてる時の事を少し…」
動揺して声が震える。
それを見てか、エルヴィンに両手首を捕まれ仰向けに押し倒された。
「っ…!ちょっとエルヴィン…!」
布団が完全にはだけて両腕も顔の横で固定されて隠す方法が無くなった。
今更なんだろうけど、恥ずかしくて目を逸らす。
「は…俺の事が好きなのか?」
驚きのあまり、目を見開いた。
エルヴィンはそんなに冗談を言う性格じゃない。
どうして?
私が行為中に口を滑らせてしまったの?
調査兵団分隊長の私が恋愛なんてしてる場合じゃないのに ─
「…ごめん、忘れて…」
「俺は忘れたくない。」
手首を掴む拳に力が込められる。
「……どうして…」
「俺はが好きだ。」
楔だらけだった心が開花したようにパッと温もった。
「調査兵として、他人に心を奪われるようではならないと俺も思っていたさ。だが君を抱いて、やっと素直になれた。以前から君が好きだったんだ。だからこのまま終わらせたくない。」
ここは私の執務室だというのにエルヴィンの背景には青空とクロッカスの花畑が見える。
なんて馬鹿正直な私。お花畑なのは私の脳内よ。
「…私も、貴方の事が本当に…ずっと好きだったって言ったら…どうするの?」
「そんなの決まっているだろう?」
エルヴィンは目を細めて優しく微笑んだ。