第3章 好機な誘惑【エルヴィン】*
「そんなの決まっているだろう?君の恋人になりたい。」
あのエルヴィンからこんな言葉が出るなんて想像できなかった。
団長の補佐として忙しく動き回っているエルヴィンは常に凛々しくて堅実。
冷酷だという人もいるけど、彼は本当は人付き合いが苦手で気難しく見られてしまうのではないかとそう思っていた。
自分と少し似ている。
そう感じてから自然と目で追うようになっていた。
そんな彼がまさか私に好意を寄せていたなんて。
顔に熱が集中する。
口ごもっている私を見て、エルヴィンはクスッと笑った。
「可愛いな、。」
「へ!?なに言っ」チュッ
軽い口付けに私の言葉は遮られた。
好きな人の前だと、私はこんなにもたじろいでしまうのだと知った。
「貴方って…こんなに積極的だったのね…?」
「イヤか?」
「ううん、素敵だと思う。」
私がそう言うとまた微笑んで、漸く手を離してくれた。
急いで布団を手繰り寄せて身体を隠し、2人してベッドに対面して座った。
「今更じゃないか?」
「昨日は昨日、今日は今日よ…」
「そうか…それで、答えが聞きたいんだが…」
声色は一切変化しないが、彼のチャームポイントは少し困ったように下がっている。
ほんの少しだけ自信が無いのだろうか。
私はそんな彼を上目遣いで見上げた。
「こんな私で良かったら…お願いします…」
彼の目が子供のようにパァっと輝いたように見えた。
そんな風にも笑うんだ。
まだ知らない事だらけの2人の新たな生活が始まった ──
fin