第3章 好機な誘惑【エルヴィン】*
分隊長の執務室はほのかに花の香りがした。
普段彼女が纏っている香りと同じだった。
見るとローテーブルの上には布製コースターに花瓶。
白と紫のクロッカスが生けられている。
それと同じセットがベッドサイドのチェストにも飾られている。
香りの正体はこれだったのか。
部屋を進み隅にあるベッドへ分隊長を寝かせた。
身体に少しでも衝撃があると漏れている声が、想像を掻き立ててくる。
寝ている分隊長は息があがって涙ぐみ、ドレスのスリットから覗かせた生足が男の理性を揺さぶってくる。
このまま襲うことは容易にできるだろう。
しかし、いくら何でも酔って動けない女性を ─
しかし、才色兼備で高嶺の花だと呼ばれる分隊長が目の前で無防備な姿で ─
しかししかしと葛藤する。
気が付けば俺はベッドに手を着いて、彼女の身体を凝視してしまっていた。
俺自身、溜まっていないと言えば嘘になる。
訓練兵時代に塞いだ恋心以降、興味も持たず関係も持たずでやってきた俺には魔が差してしまうほどの刺激だ。
ギュッ ─
ベッドに着いていた俺の手に、分隊長の手が重なる。
熱っぽい視線が俺に向いていた。
「エルヴィ、もう…限界…」
重ねられた艶めかしい指が、俺の腕を厭らしく撫でる。
「本当は泥酔してるんじゃなくて…薬を飲まされたの…」
「薬…ですか…?」
心臓が高鳴る。
分隊長は体を起こし、縋るように俺の目の前まで移動するとドレスの中の下着を下ろし始めた。
陰部こそ直接見えないもののスカートを捲ればそこは、という期待を膨らませてくる。
「ごめんね、エルヴィン…」
分隊長はスリットに自身の指を滑り込ませた。
クチュ、クチュと水気を帯びた音を立てる。
「あぁ…!ん、ぁ…!」
それが何の音かくらい分かる。
彼女が飲んだ薬だって察しがつく。
「見てるだけッ…で良いからぁ…!」
俺の目を見て喘ぎ続ける彼女を
気付けば押し倒していた。