第2章 お悩み相談室【ハンジ】*
そうだ。分隊長は利尿薬をくれた人。飲んだことを伝えてトイレに向かわせてもらおう。
「あの、ハン」「ところで、アレ飲んだんでしょ?」
分隊長に言葉を遮られてしまったが、“アレ”とは利尿薬の事だろう。
その話を私もしたかったんです。
「はい、飲みました!すごい威力ですね!もう何度か尿意があってその度に…!」
ちょっと待て私。利尿薬のレビューは相当恥ずかしいのでは?
ましてや分隊長に汚い話をしているじゃないか。
私がしたいのは汚い話じゃなくてトイレに行きたい。それだけだ。
「そうだろそうだろ〜?これがあと数十分続くからね。あ、もしかして今もうトイレ行きたい?」
「はい!行きたいです!」
何たる醜態なんだ。
尿意が言葉を選ばせてくれない。
ハンジ分隊長に向かって“トイレに行きたい!”などと子供のように言ってしまった。
私は恥ずかしくて赤くなった顔を隠しながら、「失礼します。」と言って座学室を出ようとした。
「あ、ちょっと待って。」
ガシ、と分隊長に手を捕まれ引き止められた。
「もうほとんど色無くなってるんでしょ?」
「は、はい…。もう透明で…臭いも無いです…。」
「なら、ここでしてよ。」
衝撃を受けると、身体の温かさがスっと引いていくのを体感できる。
今、この人なんて言った?
“ここでして”って言った?
ここで排尿を?
「できるわけないですよ!何言ってるんですか!」
私は分隊長の手を振りほどいてトイレに走った。
後ろから「あ!待て!」と聞こえるがお構い無しに。
駆け込んだ個室のドアに手をかけて中に入ろうとすると、そのドアは分隊長により閉めることができず、更には分隊長も同じ個室に入ってきた。
分隊長が後ろ手に鍵をかける。
「いきなり走ってったら危ないだろう、。」
「ハンジさん…?出てってください…」
「いやだ。がおしっこしてるの見る。」
分隊長は笑顔も武器にできる。
可愛らしい笑顔に私は落とされ、今の笑顔に私は怯える。
このまま素直に出てくれないと悟った私は、仕方なく履いている服を下げて便器に腰掛ける。
分隊長は女性だし、研究者でもある。
だから…だから…恥ずかしがっているのは私だけだ。
目的は分からないが心を無にして指示に従わなくては。