第2章 お悩み相談室【ハンジ】*
「持ってるよ、私。利尿薬くらいね。」
何で持っているんだ、と開いた口が塞がらない私とモブリット。
いや、ハンジ分隊長なら持っていておかしくないか。数年前に捕獲した巨人に飲ませてたっけ。
「え…でもハンジさん…服薬中とか…」
「違うよ。もしもの時用さ。」
「そうですか…それなら…頂戴します。」
そう言って、ハンジ分隊長から紙袋を受け取った。中には小さく小分けにされた粉薬が一つ入っていた。
「明日にでも飲むといいよ。」
「はい、そうしてみます。」
脱水にならない為にも、軽い水分補給も同時にした方が良いらしい。朝食後にでも飲んでみよう。
「すみません、食事中だったのにこんな話して…」
「私は平気だよ。可愛い部下の悩み事だしね。」
「モブリットもごめんね…」
「いや、もう慣れたよ。」
はは、慣れるか。きっと中堅以上の兵士はハンジ分隊長のおかげでこういう話をしながら食事を摂る事に慣れたと思う。リヴァイ兵長も意外と下の話するし。
今更気にかけることでもなかったかもしれない。
「あはは、…あ、食器返却してきますね。」
私は急いで全員分の食器をトレーに乗せて部屋を出た。
明日は一日中トイレに居ます、と言っている気がして恥ずかしくてその場を立ち去りたかった。
まだ書類が残っているので無理な話なのだが。
・
パタン…と扉が閉まるのを待ち、分隊長がまた口を開いた。
「明日飲むみたいだよ。」
「そうみたいですね…」
「尿意が収まらないを介抱しに行ってあげなよ?」
「いや、行きませんよ…。本当にただの同期なんです。お互いそういう風に見てませんから…。」
急にの悩み事を聞き出すなんて、やっぱり俺の為になると思ったんだな。
きちんと納得してもらわないと、定期的に思い出してはちょっかい出されそうだし…。
かと言って、が好きなのは分隊長です!と教えられるものではないし…。俺の悩み事になってしまった。
「分隊長…利尿薬を飲んだ人の所に行くのは可哀想ですよ…。」
「まあそうかもだけど…可愛いと思うんだよね。」
「はい……?」
「我慢の限界で恥ずかしそうにするはすごく可愛いと思う。見てみたくない?」
「……褒められた癖じゃないですよそれ…」