第2章 お悩み相談室【ハンジ】*
「戻りましたー」
三人分の夕食をトレーに乗せて、分隊長の執務室に戻った。
退室前と変わらずに作業をする二人は何やら会話をしていたようだ。
「おかえり。さあ夕食にしよう。」
お皿が置ける程度に机の上を片付けて、分隊長はデスクで私とモブリットはソファーに並んで食べ始めた。
今日はレンズ豆のスープとパン。なんと乾燥させたスライスリンゴまであった。
「さっきモブリットと話してたんだけどさぁ、って悩み事とかないの?」
「悩み、ですか?」
“うんうん”と頷く分隊長は期待の眼差しでこちらを見てくる。
分隊長が、新兵でも来客でもない私にこんな事を聞いてくるのは珍しい。
疑いながらも、私に興味を示してくれた事が嬉しいので答えなければ。
「そうですね…最近脚が浮腫んでいる気がするんです。」
「そうなの?」
「はい、ブーツが以前より窮屈になったので…。太ったのかなと思ったんですがそんな環境でもないですし、浮腫かなと…」
「浮腫ねぇ、何か解決策知ってる?モブリット。」
パンを齧りながらすぐに私の隣に座るモブリットへ振った。
興味があるのか、無いのか、知らないだけなのか。
何か変だな、今日の分隊長。
振られたモブリットも「うーん」と悩んでる。
「医療班の先生に聞いたら、冷えや長時間のデスクワークが原因かもと仰っていたので、足湯やマッサージを念入りにしてます。」
適度な運動も必要らしいが、調査兵である私が運動不足なはずがない。
そう思っていると、ポカンと見つめてくる二人。
「なんだ、解決策はあるんじゃないか。」
「はい、でもまだ解決はしていないので悩み事なんです。」
「手っ取り早く浮腫をとりたいなら、利尿薬を使えば?」
「が脱水症状になってしまいますよ…!」
分隊長に鋭いツッコミをいれる副長。
でも利尿薬か。薬を飲んだら数時間は定期的に水分が排出されるアレ。そもそも浮腫をとるために使う事が多いらしい。
先生に処方してもらえば手に入るんだろうか。正直足湯マッサージだけじゃ時間がかかりすぎていて困っている。
「使ってみたいです、利尿薬。」
「えぇ?本気か?丸一日は潰れるぞ?」
驚くモブリット。
でも浮腫は壁外調査前から悩んでる。一日くらい平気だ。
「あるよ、利尿薬。」
「「え?」」