第8章 潜入の前に※
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弔くんにのまれてはダメ、と目の前の手に集中する。弔くんの赤い瞳と同じ色の染みが、真っ白な包帯を染めていた。
ぐるぐると包帯を解いてやると、露わになる生々しい傷痕に私の胸がチクリと痛む。
『消毒するね。ちょっと沁みるよ。』
「っ!!」
消毒綿を優しくトントンと傷痕に叩くと痛みで歪む弔くんの顔
『ごめんっ.........でもこれで大丈夫かな。次反対の手も。』
弔くんの反対側に座り、消毒をしながら、そういえば...と気になったことを弔くん聞いてみる。
『最近、黒霧が忙しそうにしてるんだけど弔くん何か知ってる?』
「あぁ。黒霧のやつまだ言ってなかったのか」
なんの事だろう?と消毒していた手を止め弔くんを見つめる。
「お前の雄英の手続きを黒霧とドクターにやらせてる。」
『あー、潜入の。いつから?』
ついにあの雄英に......と心構えながら弔くんの返事を待つ
「あれが終わったらすぐだ。」
あれ?
弔くんが指差した方を見ると、弔くんがさっきまで食い入るように見ていたテレビ。そこには雄英の生徒たちが何やら生徒同士で競い合ってる様子が映し出されていた。
『え......かっちゃん...?』
「あ?」
弔くんにギロリと睨まれ尾骶骨がピンっとなる。
『っっUSJでそう呼ばれてたよ』
USJでかっちゃんと呼ばれてた男の子と、脳無ちゃんを氷漬けにしてた男の子が個性を使いながら戦っている。
『弔くん、これはなに?』
「雄英体育祭。雄英もバカだよなァ。個性で競い合うところを全国中継なんて、俺らみたいなヴィランに手の内晒すようなもんだろ」
『ふーん。で、これが終わったら私のスパイ生活が始まるって事?』
「あぁ。............けどその前に...」
『ぇ...ちょっ......!?』