第25章 新しい生活※
『あ、いや私もデクくんと同じで寝れなくてね。ちょっとお散歩』
そこまで言ってからふと、デクくんのソレに気づいた。
『あぁ、やっぱり』
「さん?」
話が繋がらないこの会話にデクくんは首を傾げて私を見る。対して私は、不思議な爽快感に包まれていた。パズルの解法を見つけた、そんな心地良さだった。
『前に言ったよね。デクくんとオールマイトの個性はある事は分かるんだけれど、はっきり見えないって』
「え?...うん。」
突然切り出した私の話にデクくんは、明らかに動揺を見せた。
『昨日さ、オールマイトに会ったんだよね。神野の事件以降初めて。』
「うん」
『そしたらね、無かったの。個性、消えてたの。前まではあったのにね。』
「え...」
そこまで話すとデクくんは、次に私が何を言いたいのか察したのか、覚悟を決めたような表情に変わった。
ねえデクくん、と目を逸らさずに言った。
『ワンフォーオールってなに?』
デクくんを見た瞬間に前よりも鮮明に頭に入ってきたその言葉をそのままデクくんに伝えた。目の前の彼は認めるべきか、白を切るべきか考えあぐねているように見えた。
けれど私は黒だとすぐに判断できた。
「ッ、さんにバレるのは時間の問題だと思ってたんだ。」
バレる、というデクくんの言い方が妙に引っかかった。
『他の人には隠してるの?』
「うん。僕の個性は人から授かったものでね。」
観念したのか、話を切り出し始めたデクくん。
『その貰った相手がオールマイト?』
私がそう聞くとデクくんは首を縦に振った。
なるほど。それならオールマイトが無個性になっていたのも納得がいく。
「ここから先詳しくは、オールマイトも交えてでもいいかな?オールマイトには僕から伝えておくよ。」
『分かった。』
デクくんとはそこで別れた。
共有スペースを通ると、昨日テーブルに置かれていた「ばくごー用」と書かれたメモとケーキが綺麗に無くなっていたのであの後かっちゃんが食べたんだなと考えた。
ワンフォーオール、か。
先生の個性、オールフォーワンとは何か関係があるのだろうか。
エレベーターに乗り込み自分の部屋へ向かう。
今日の予定は何もない...はず。
部屋の扉を開けてベットに雪崩れるようにして私はまた眠りについた。