第25章 新しい生活※
けれど私はあの日の続きをしようとはもう思わなかった。現に私は今、武器を身体にしまい込んでない。仮にも敵の陣地に手ぶらでやって来たのだ。
イレイザーヘッドの右目の下の傷に触れようとしたところで自分の手首を掴まれ、綴じていたはずの双眸とバッチリ視線が合い驚いた。
『っ...!!』
その瞬間、一瞬で視界がぐるりと変わり両手首をベットに縫い付けられ、私がイレイザーヘッドと天井を見上げる体制になった。
「寝込みを襲うとはまるでヴィランだな。俺の授業でそんなこと教えたつもりはないが」
自分の心臓がどくんと弾んだのが分かった。
けれどそれは、自分に向けられたヴィランという言葉になのか、口端を微かに上げ目をぎらつかせ私を見下ろすイレイザーヘッドの男の姿に、なのかは自分でも判別がつかなかった。
「お前は自分の足でここへ来た、合意と受け取っていいんだな?」
自分の武器も置いてまでここに来た。敵愾心なんてとうに消えていた。いつからだろう。
ぼんやりとする頭で考えようとしたけれどすぐにやめた。今この瞬間だけはこの男に絆されたいと思った。
何も考える隙のないくらいにめちゃくちゃにしてほしい、返事をする代わりにイレイザーヘッドの首に腕を回し自らキスをした。
『んっ...ふ...ぁ...』
触れるだけのキスだったのが今度はイレイザーヘッドから舌を送り込んできた。だんだんとそれは角度を変えた深い口づけになり、互いの荒い息で部屋を満たした。
お互いの舌と唾液を擦り合わせる卑猥な水音に触れられていない耳にも感じている様な錯覚を起こした。
『あっ.....ンン....ッ....』
羽織っていたカーディガンを脱がされキャミソール1枚、その上から胸をやわやわと形を変える様にして揉まれた。
「声、きかせて」
『ッ、だって、ほかのせんせ...ッあ...んん』
耳に口元をピタリと寄せて、イレイザーヘッドの甘い低音が送られた。普段の彼からは想像もつかない声音に背中にぞくぞくと甘い痺れが走る。
身を捩るたびに聞こえてくる衣擦れする音ですら心地よく感じてしまう。
そのまま耳たぶを甘噛みされ、吸われて、中を舌が這う。舌が動きまわるたびにクチュクチュという音がダイレクトに脳にまで伝わってきた。