第25章 新しい生活※
黒と白を基調にした部屋が一面に広がった。無駄ものがなく、かと言って家具が全くないわけでもない。所謂シンプルなお部屋だった。
生徒の部屋より若干大きいその部屋の隅に配置されたベッドの上でイレイザーヘッドは静かに眠っていた。
『あ、』
寝ている人間の部屋に勝手に入るのは如何なものか、と思うもその思考もベットのサイドテーブルに置いてあった写真立てを見て泡のように消えていった。
音を立てないようにベットの側まで行き、興味本位で写真立てを手に取る。
普段自分が着ている物と全く同じ制服を着た若い男が3人仲睦まじく写っていた。
すぐにその中の1人が若い時のイレイザーヘッドだと分かった。
空色の髪の無邪気に笑う青年を真ん中に、肩を組むようにして並んでいた。左がイレイザーヘッド。おそらく右の男はサングラスからしてプレゼントマイク...?
学校でもこの2人が並んで歩いているところを何度か見たことがあるが学生の頃からの付き合いなんだとそこで知った。
真ん中の青年は雄英では見た事ないがきっと今もどこかでヒーロー活動しているのだろうと、一度も会った事もない彼にそう思った。
手に持った写真立ての中のイレイザーヘッドと、すぐ隣で寝ている彼を交互に見やる。
『ふふっ』
無気力そうなところは今も昔も変わらないんですね、と心の中で毒づいた。
『.......』
静かに写真立てを戻して、ベットの上ですやすやと眠るイレイザーヘッドを見る。
──雄英に戻ったらイレイザーを殺せ
忘れていた弔くんの言葉を思い出す。
秒針を刻む音が静寂さを引き立たせる。
ゆっくりとベットの縁に片足を掛けて体重を掛けると軋む音が響いた。そのまま片足も宙に上げてイレイザーヘッドに跨る体制になった。
普通、人1人が自分の上に乗っかったら重さで起きないだろうか?と思いながらも呑気に寝ているイレイザーヘッドの顔を見下ろす。
自分の下にいる男の首筋をゆっくりとなぞる。
今ならあの時の.....合宿の時にやり合った続きができる。あの時できなかったその先を、今なら出来る。と自分に言い聞かせる。
このままイレイザーヘッドを殺して、今すぐにでも雄英から立ち去って弔くんの元へ行って、堂々と殺してきたよと言ってしまえばいい。
そして今まで通り、ヴィランとして生きていけばいいのに。