第25章 新しい生活※
『なくなっ...てる...?』
「......ん?」
質問とは違う答えが返ってきてキョトンとするオールマイトだが、それに構うほど今私の頭は整理しきれていない。
小さい頃、黒霧を待っていた公園でデクくんを見た時と同じ感覚。無個性。それが今目の前のオールマイトからも感じる。
どういう事......?
個性がなくなる...?そんな事があるのだろうか。それならデクくんの方にもなにか変化はあるのだろうか。先ほどフリースペースでみんなと話していた時にどうして気づかなかったのだと、自分の落ち度に項垂れる。
「少女...大丈夫?」
目の前でオロオロとするオールマイトを見て我に帰る。
『あ、いえ。ちょっと考え事していて。』
出来るだけ怪しまれないよう平然を装うが私の頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
その後も他愛もない話を少しして、と言っても当の私は個性が無くなったという事実で頭がいっぱいで全く話は入ってこなかったが、そこでオールマイトは別れた。
ミッドナイトに言われた部屋の扉の前に着いてから先ほどの彼女の言葉を思い出した。
───彼寝起きは悪いから
頭の中でその言葉がこだまする。
どうしてそれをミッドナイトが知っているんだろうか。ただの同じ職場の人間。でもそこまで知っている関係......と考えたところで、2人が身体の関係があったのではないかと勘繰りたくもなる。
過去のことなのか、現在進行形か。
そんな事は自分には関係ないと、込み上げてくる感情に言い聞かせながら控えめにノックを2回した。
けれど中から返事がない。
『相澤せんせ...』
今度は少し強めに2回ノックをして小さな声で名前を呼んだ。
これも返事がない。
強行突破だ、と思い試しにドアノブに手をかけるとガチャリと扉が空いた。
鍵かけないなんて、とヴィランながらヒーローを心配してしまう。
『入りますからね、おじゃまします...』
そう言いながら部屋の内側に足を入れたところで、部屋の電気がついていない事に気づく。
生徒部屋と同じ構造なら、と暗闇のなか壁に手這わせて、闇雲ににスイッチを探す。指先に凹凸が触れたところでソレを押すと部屋が一気に明るくなった。