第25章 新しい生活※
黒のタンクトップから伸びる鍛え上げられた腕に彼も男なのだと思い知らされる。まだ濡れている金髪の髪の毛は一段とキラキラとして見えた。
首にかけたタオルで金色の髪の毛をガシガシと乱暴に拭きながら私の横を通り過ぎたかっちゃん。
けれどその足は遠のく事はなく私の対角線上で止まったので、私もつい足を止めてしまう。怪訝に思い彼の背中をじっと見る。
なァ、かっちゃんの低い声が静かに響いた。
「クソ眼鏡とはいつ知り合ったんだよ」
『へ、』
思いもよらぬ質問に音にもならない声が出た。
クソ眼鏡、が誰を指すのかも分かる。どうせ委員長の事だ。質問の意味、も分かる。飯田くんといつ知り合ったのか、そのままの意味だ。
けれどどうして今それを聞いてくるのかが分からなかった。
『いつって...私が雄英に来てからだけど』
「それまでクソ眼鏡と面識は」
まるでその答えを待っていたかのように次の質問をすぐにぶつけてきたかっちゃんに、つい固唾を飲む。
『ない』
USJ襲撃時で知っていたけれど、そんなことも言えるはずはないのでそれだけ答えた。
「......そーかよ」
どこか腑に落ちないような返しに違和感を感じるも、そもそもこの質問自体が違和感なのだからと自分に言い聞かせる。
『なんでいきなりそんなこと?』
「別に」
『なにそれ、かっちゃんらしくないなあ』
ハハ、と笑いながらかっちゃんを揶揄う様に言ったが、何が気に入らなかったのかそこで初めて後ろを振り返り私とバッチリ視線が合った。
褐色の双眸が私を捕らえている。距離はあるのに目の前のかっちゃんから目が離せなかった。
「うぜェ」
『え、』
何をいうかと思えば今度は暴言?ますます目の前の男の思考が分からなかった。
「テメェ...その顔止めろや。胸糞悪ィんだよ」
それだけ言うと、そのまま歩いて遠ざかっていくかっちゃん。フリースペースのソファに勢いよく座り自分宛のメモとケーキを眺めている。
よく分からない質問されたと思ったら今度は暴言を吐かれ、声をかける気にもなれずに私はフリースペースを通り過ぎて自室に戻った。
時計を見れば時刻は23時30分。
気づけば私の足は玄関口へ向かっていた。