第25章 新しい生活※
しばらくして寮の中へ戻ると共同スペースに生徒たちが集まっていた。
「あ!もこっち来なよー!」
「ちゃん、今ちょうどお部屋披露大会終わったところなんよ。」
芦戸さんと麗日さんに手招きされて私もみんなのところへ行くと仄かに甘い香りがした。
『大会、って事は順位付けでもしてたの?』
「そーそー。贈賄で砂藤が優勝。」
呆れたように笑いながら上鳴くんが応えた。
『ぞーわい...?』
「たまたまケーキ焼いてる時に始まったからよ。これ食った女子の票が全部俺のところに入ったってワケ。あ、も食うか?」
部屋関係ないじゃん、と思いながらも砂藤くんに渡されたお皿を受け取る。お皿に乗ったシフォンケーキはまだ焼きたてなのか湯気がゆらゆらと揺れている。
「ちゃん、ヤオモモの淹れてくれた紅茶と一緒に食べると美味しいよ〜」
そう言った葉隠さんの隣に座りシフォンケーキを口に入れた。
『あ...』
「どした、口に合わなかったか?」
砂藤くんに心配そうに顔をのぞき込まれた。
『ううん。違うの。すごく美味しくて。』
お店で買うのと同じくらい、いやそれ以上のクオリティだと思った。
甘くてふわふわで美味しい。自然と笑みが溢れた。
「、やーっと笑ったね」
向かいのソファに座っていた耳郎さんに言われて首を傾げた。
「さん、林間合宿から何か思い詰めたような顔されてましたので心配してましたのよッ」
「つか、俺の笑った顔見るの何気初めてかも」
「こんなんでが笑ってくれるなら、俺いくらでもケーキ作るわ」
「オイ砂藤!下心丸出しじゃねぇか!」
「峰田ちゃんには言われたくないと思うわ」
上鳴くんに初めてと言われてはたと気づく。
そういえばクラスで笑った事なんてあったけ...
なんとか思い出して指を折って数えようとするものの、その指が折れる事はなかった。
『A組から見て私ってどんなふうに見えてるの』
気づけばそんな事を口にしていた。
少し前の自分なら周りの目線なんて気にもしなかったし、それこそ正体がバレることをなんとも思っていなかったから、自分の口から出た言葉に心底驚いた。
「なーんかその言い方好きくないないわ〜」
「上鳴に同意見だ。」