第25章 新しい生活※
「それは、少しは俺がお前の悩みのタネを潰すことが出来たとの解釈でいいか?」
『うん。少しは、ね。』
そう言ったが、身体の向きを変え俺の方へ向いた。ベンチを這うようにして今度は彼女のほうから俺に向かって腕を伸ばしてきた。
その白くて細い指先は捕縛布をしていない俺の喉をつう、となぞった。
けどその表情は苦痛に耐えるような、酷く悲しい目をしていた。
「ッ、おい......」
ていうか、こんなところ他の生徒に見られたらやばいだろ。
『大丈夫ですよ。他のみんなは今、お部屋披露大会してるんだって。』
ふと背もたれ側にあるA組の寮へ目線をやっていたのがバレていたのか、まるで俺の心を見透かしたかのようにが言った。
喉をなぞる指先は滑るようにして俺の頬へ添えられた。
ごめんね、のそんな声が小さく聞こえたと同時に再び重ねられた唇。
何に対しての謝罪なのか考えるより先にの柔らかい舌が入ってきた。
チッ......
「おい、どういう了見だ」
流されそうになる自分をなんとか抑えて、を引き剥がし目の奥をじっと見る。
『...っ、お願い......イレイザーヘッド。今だけ、今だけでいいから。』
懇願するようなその目に、その言葉に、教師ではなく雄としての俺が反応してしまった。
「......場所が悪いな。本当にその気があるなら、23時。教師寮、俺の部屋に来い。大人を揶揄うとどうなるか教えてやる。俺は先に戻る。」
それだけ言い、ベンチから立ち上がりきた道を戻った。
そもそも先に手を出したのはあの時......バスの中の俺じゃねぇか、と過去の自分に今更ながら後悔が押し寄せる。
あの時バレていないと思っていた出来事が実は本人にバレていて、しかもこんな仕打ちで返ってくるとはな。
「くそッ......」
教師と生徒、そんな事はもう頭から抜けていた。