第25章 新しい生活※
『驚きました?』
小さく笑いながら俺に質問してきた。
「......当たり前だろ。大人を揶揄うんじゃない。」
『私もあの時同じ気持ちでしたよ。』
「...ん?」
の言っている意味が分からなかった。
あの時?同じ?どう言う意味だ。
『あの時は口じゃなくてここ、でしたけど。ね、相澤先生。』
「ッ...!」
が意味ありげな笑みを浮かべここ、と指しているのは自分の額。
間違いない、そう思った。はあのバスの中の出来事を言っているんだとそう確信した。全身から血の気が引いてくのが分かった。
あの時、起きていたのか...
気持ち悪いと罵倒されるか?
......いや、だったらなぜ今自ら俺に?
自問自答を繰り返しているとが先に口を開いた。
『先生がさっき言ってた──』
そこでのトーンが変わった。
『信頼を取り戻してほしいって言ってたけど、
グラスから溢れた水が元に戻らないように失った信頼を取り戻す方法ってあるのかな。』
続けてが何か喋っていたような気がするが小さな声だったのでうまく聞き取れなかった。
たしかに昼間は勝手にルールを破った5名に向かってそうは言ったが...
なぜかのその言葉は彼女の真剣な苦しみから吐き出された彼女自身の本音の響きに感じられた。
なにか悩んでいることでもあるのか?
「変わりたい、その人の気持ち次第じゃないか」
『気持ち?』
「あぁ。確かに信頼を取り戻すのは難しいよ。
どうしたって過去は変えられないからな───」
けどな、そう言って一息吐いてから言葉を続けた。
「未来は変えられる」
『未来......か。そっか。うん、そうだね。』
唇でやんわり弧を描き力なく笑い、未来と呟いた彼女の眉が歪んだのは気のせいだろうか。
『今この瞬間、ここに来たのがイレイザーヘッドで良かったな。』
時折コイツは俺のことを不意にヒーローネームで呼んでくることがある。が、今回は明らかに、
意図的にそう呼ばれたのだと感じた。