第25章 新しい生活※
寮の説明も終わり、それぞれが振り分けられた自分の部屋へ行き荷解きの作業に入る。必要そうな家具は全てドクターに送ってもらった。
ふと山積みになった段ボールの中から他のものよりも一回り小さい段ボールに目がいった。惹きつけられるようにしてその段ボールを開けた。
『あれ、なんだろうこれ。』
見た限り自分の私物ではなかった。身に覚えがない。段ボールに入っていたのは小さな封筒と、小さな額縁のようなもの。写真立てだろうか。
ドクターの仕業か?と不審に思いながらも一緒に入っていた封筒を開けた。
『あ......』
封筒の中に入っていた2つのものを確認してから視界が歪んだ。そして2つのソレを自分の目から溢れたものでポタポタと濡らしていく。
可愛らしい字で書かれた手紙と、いつ撮っていたのかトガちゃんが内カメラにして連合のみんなを収めた写真だった。
内カメラで撮ったトガちゃんの後ろにはカウンターに座る弔くんと、弔くんを見上げるようにして床に並んで座る私と荼毘とミスター、そしてその様子を笑っているのかトゥワイス、スピナー、マグ姉の姿が仲睦まじく写っていた。
林間合宿帰ってきてすぐだったっけ。たしか私も荼毘もミスターも弔くんに怒られてるところの写真だった。
なんでもない瞬間だけれど私にとっては大切で、こういう他愛もない時間が好きだったりした。
──ちゃんが寂しくならないように
連合のみんなの写真を送ります。
トガ
手紙は一言だけれどトガちゃんの優しさを感じた。と同時に罪悪感も込み上げてきた。
一緒に入っていた写真立てに、写真を入れてベットのサイドテーブルに置いた。
『...こんなもんでいいか。』
完成した殺風景な部屋を見て言葉をこぼす。
身体の中にしまってあった武器や仮面を取り出し、床に音を立てて落としていく。小刀の金属音がやけに大きく響いた。落ちた仮面だけを手に取り眺める。
狐の形をした白と黒に分かれた仮面。
───狐は化けるんだ
これを渡された時、弔くんに言われた言葉だ。
『弔くん、ヒーローの巣窟に紛れ込んだ化け狐は帰り道が分からなくなっちゃったみたい』
誰に届くこともない力のない独り言を呟きながら、私は武器や仮面をサイドチェストの中に閉まった。