第25章 新しい生活※
『あ、ここ......』
ワープゲートでたどり着いた部屋。長年使われていなかったせいか、埃っぽいが忘れるはずもない。
私が......初めて弔くんと会った場所だった。弔くんと黒霧と何年も一緒に過ごした部屋。あの頃は大きく見えたこの部屋も、身体の大きな大人が何人もいると小さく見えてしまう。
「ちゃんッ!!トガは寂しかったのです!!」
抱きつかれて身体が強張る。トガちゃんに会えたのに罪悪感も相まってか素直に喜べない。
『トガちゃん...弔くんは?』
「お隣の部屋にいるみたいですッ」
「私が呼んできましょう。」
そう言って黒霧が部屋から出て行き、隣の部屋にいるであろう弔くんを呼びに行った。
部屋の中の電気は最小限で付けられていたせいか薄暗く重い空気が流れた。
「ちゃんの脱出ショーにはおじさんびっくりしちゃった」
アジトにあったものよりも狭いソファに荼毘と並んで座っていたミスターが、組んだ足の上で頬杖をつき意味ありげに呟いた。
珍しく素顔のミスターの口元は不気味に弧を描いている。
「俺がトんでる間に随分楽しそうな事してたらしいじゃねェか...なァ?。」
ミスターの隣で荼毘もクツクツと喉を鳴らして笑いながら言葉を溢した。けれど2人とも目が笑ってないのはきっときのせいではない。
怖い───
今この瞬間だって荼毘の蒼炎が飛んできたっておかしくない。ミスターに触れられて圧縮されたっておかしくないのに。
目の前の2人に対して、初めて言い知れぬ恐怖を感じた。例えばそれはネズミが猛禽類を恐れるような、本能的な恐怖だった
『私は......ッ、』
そう自分で口に出しておきながら、私はその後に続く言葉を紡ぎ出せないでいた。私は何を言おうとしたんだろう。
言葉を詰まらせていると、背後で扉の開閉音とともに畏怖を感じ取った。振り返らなくてもわかる。弔くんだ。