第24章 vs■■■
『っは.........』
一瞬、呼吸の仕方を忘れた。息を吸い込んだまま、吐き出すのを忘れていた。
倒れたまま動かない先生。
オールマイトがゆっくり、ゆっくりと左手の拳を空に掲げた。徐々に筋肉質のいつもの姿に戻っていく。
その瞬間ここにいる人々からの歓声が湧き上がった。
───オ、オールマイト....ッ....!!
ヴィランは動かず...!!勝利!オールマイト!
勝利のスタンディングです.....!!!
映像の中からは涙ぐむようなリポーターの声が聞こえた。
つんざくような歓声と、リポーターの勝利というワードが先生の負けを私に知らせた。
オールマイトの勝利にホッとしたのか、私を抱えるかっちゃんの手が一瞬緩み自分の足で地に立った。
『は....っ...せんせ....っ...』
1歩、2歩、とモニターへ近づく。怪我したはずの足の痛みなど今は感じない。
モニターを見上げ倒れた先生の姿を目に焼き付けた。もう2度と、大好きなあの手に触れてもらえない。そう思うと身体が震えた。
「轟くん、八百万くんらと合流しなければ」
「とりあえず動こうぜ!爆豪とのことヒーローや警察に報告しなきゃいけねぇだろ!」
委員長と切島くんがそう言ったが私はモニターに釘付けだった。
両手を拘束され、警察に連れ去られていく先生の姿。そしてオールマイトがカメラに向かって人差し指をさした。つまりテレビの前にいる人々に向かって指を差してることになる。
「次は......君だ。」
「やっぱすげぇよ...アンタ...!」
「ありがとう!オールマイト!」
オールマイトから短く発せられたメッセージにまたもや上がる歓声。
『やっ...う....せんせ....』
オールマイトのその言葉に、あぁ本当に終わってしまったんだとその場にへたり込み、声を押し殺して泣いた。
──私たちは負けたんだ
私の斜め前ではなぜかデクくんも泣いていたが、今は他人の涙に寄り添えるほど私もできた人間じゃない。
そして私とデクくんのその様子を、後ろから訝しげにかっちゃんが見ていたことなんてこの時の私は知らなかった。
ヒーローの卵たちに助けられた。先生はオールマイトに負けた。感情がぐちゃぐちゃだ。
あぁ、私は何と戦っているんだろう。