第24章 vs■■■
「僕に考えがあるんだ。」
深刻な表情で、けれど目は本気のデクくんが小声で呟いた。デクくんの表情を見てつい固唾を飲む。
あぁ、そうか。ヒーローは諦めが悪いのか。私は期待を込め、嘲笑とも侮蔑ともつかない笑みで、デクくんの手段を聞いた。
「まずは、切島くんに捕まった僕と飯田くんがサイドで個性でスピードを出す。そして切島くんの硬化で壁をぶち抜く───」
デクくんが話していくことを全員が頭の中で描きながら相槌を打っていく。
「そして壁を破った瞬間、轟くんはすぐに氷結で道を形成してほしい。ジャンプ台を作って欲しいんだ。出来るだけ高く飛べるように───」
なるほど、とヴィランながら納得してしまった。期末試験で勉強を教えてもらった時もそうだっけど、デクくんはやっぱり説明が上手い。すぐに頭の中で想像ができた。
「そしたら切島くんだ。僕じゃ駄目だ。轟くんでも飯田くんでもさんでも八百万さんでもない。かっちゃんと今まで対等に関係を築いてきた、切島くんが呼びかけるんだ。」
上手くいくかは別として今はこの方法にかけるしかない。
「やろうぜ!飯田。」
「飯田さんッ...!」
「危険な試みではあるが状況を考えれば俺たちへのリスクは少ない。何より成功すれば全てが好転する。......よし。やろう!」
なら。私が出来ることは。
『切島くん、降ろして?』
「は、なんで......」
『少しでもこの作戦の成功率を上げるため。これは推進力と跳躍力が命になるんだから。』
余計な重さはいらない。
「なら俺が背負って、」
『だめだよ、轟くん。轟くんはすぐに八百万さんと一緒にできるだけ遠くに逃げて。』
轟くんの言葉を遮り言い放った。どちらにせよ私は連合のみんなの元へ戻らないといけない。
「だめだよッ...!さん1人置いていくなんて、出来るわけないじゃないか」
『...ッ!!』
なぜかデクくんのその言葉に、小さい頃の私の姿が浮かび上がった。親に捨てられた直後の私だ。1人になった私に、デクくんが手を差し伸べてくれている、そんな情景だった。