第24章 vs■■■
『...ッ、切島くん私重いから...下ろして...ッ』
「こんなの重いに入んねーっつーの。むしろもっと飯食え!そんでまた元気になったら合宿の時みてぇに手合わせしてくれ!」
『ん.....』
ありがとう、と続けた私の言葉は切島くんには聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。ヴィランがヒーローにお礼なんて馬鹿馬鹿しいと思ったから。
弔くん、と私は心の中でつぶやいた。
私は今、なにと戦っているんだろう。
憎くて仕方ないヒーローたちの暖かさに触れてしまったら私が私でなくなってしまいそうで。
先生や連合のみんなが大好きで仕方ないはずなのに、同じくらいA組のヒーローの卵たちの事をもっと知りたくなってしまう。そんなの許されないのは分かっているのに。
そして脳裏に浮かぶ先程の会見のイレイザーヘッドの姿。
散々好き勝手して、自分勝手なのは分かってる。
けれど私はもうイレイザーヘッドをヴィランの敵として見れていない。
...ねえ弔くん、私どうしたらいい?
「...ん??」
切島くんに背負われた私は無意識に彼の右肩に顔を埋めていた。
『ごめん...少しだけこうさせて...』
「お、おう...ッ」
私の目から溢れおちたモノで静かに切島くんの右肩を濡らしたはずなのに、同じように左肩の布もやや濡れていた。
切島くんの言葉を借りるなら漢の汗、なんだろう。
ほんのり彼の耳が赤いのは気のせいかな。切島くんでも照れることなんてあるんだな、なんて考えながら目から溢れる涙を指で拭いながら静かに口元を緩ませた。