第24章 vs■■■
『あ......』
いつの間にか、自分の頭上にある小さな鉄格子から月明かりが差していた。私の座っている場所は鉄格子から真下で、ちょうど死角になり脳無ちゃんのいる場所だけを照らし出した。
私が釘付けになったのは1体の脳無ちゃんがいたからだ。立ち上がってその脳無ちゃんの元へ寄る。
間違いない。あの時の...合宿の時に来てた荼毘仕様の脳無ちゃんだ。この子だけが地べたに三角座りになっていた。ラグドールのものだろうか血痕らしきものが身体のあちこちに付着している。
『もう用済みって言われちゃったの?かわいそうに...』
意志を持たないはずの脳無ちゃんに、語りかけるように言い頬を撫でた。
『あれ......?』
動かないはずの脳無ちゃんの背中に小さな赤い光が点滅しているのに気がついた。
『...なにこれ。』
脳無ちゃんの背中につけられた小さな機械。私は身動きせずに、その機械をしばらく眺めていた。すぐに取ろうとしなかったのは、不吉な予感のようなものを感じだからだ。
なんだろう。嫌な予感がする。
恐る恐るその機械に手を伸ばした。
取り外そうにもしっかりその機械は脳無ちゃんに張り付いて取れない。接着とかそういうレベルじゃない。もっとこう...深く、結合とかそういうレベルだ。完全に脳無ちゃんの一部になってしまっている。
取り外すことを諦めて、身体から通信機を取り出した。弔くんにこの事を伝えようとしたその時だった。
「泡瀬さんの協力のもと取り付けた発信機によりますと、この倉庫で間違いありませんわッ」
「よし、緑谷と切島が見ろ。俺と飯田で担ごう。」
『...ッ!!』
な.....んで?
この声は、八百万さんと轟くん...?
それにデクくんと委員長、切島くんもいるの?
あ、わせ...?誰?B組の人だろうか。
それに発信機...って。
突然のことに思考が全く追いつかない。
なんで彼らがここにいるかよりも、まずは冷静に考えなきゃ。声が聞こえてきたのは、鉄格子のある壁の方から。轟くんらしき声が担ぐと言った。
つまりその鉄格子から中を確認する気だ。
......まずい。
咄嗟に鉄格子から死角になるところへ移動し、壁を背にしゃがみ込んだ。
コンクリートの壁一枚挟んですぐ隣には彼らがいる。その事実が私の鼓動を早めていく。