第24章 vs■■■
自室に戻り動きやすい服装に着替えてから、黒霧のゲートを潜って脳無格納庫とやらへ来た。
仮面を取り外して周辺をぐるりと見渡す。見張りをすれば良いって弔くんは言ってたけど、周りを見る限り街灯もなければ人気もない。
目の前の大きな倉庫の鉄扉を開けて中に入った。その瞬間息を飲んだ。
『う、そ......』
脳無ちゃんが1体入れそうなガラス張りのカプセルには緑色の液体らしきものと脳無ちゃんが入っていた。数にして少なくても50体はありそうだ。
弔くん、私が合宿行っている間にこんなにたくさんの脳無ちゃん用意してたのか。
『脳無......ねぇ...』
そう呟き、液体の中に入った脳無ちゃんを見ながらコンクリートの壁を背にしてズルズルと座り込んだ。折り曲げた膝に顔を埋めて目を瞑る。
──この個体はワシの肉体改造実験の負荷に耐えたただ1人の生身の人間じゃ
私が先生に引き取られた日、ドクターが先生に話している言葉を思い出した。
どんな実験だったのかは思い出せない。
親に捨てられ、途方に暮れていたところをドクターに引き取られた。一度は捨てられた命だ。当時8歳だった私はすでに生きることを諦めていたのかもしれない。
そんな時にドクターの施設にやってきたのが先生だった。
先生に初めて会って、あの大きな手に触れた。底知れぬ暖かさを初めて感じた気がした。キミは強くなれると言われた。生きてもいいんだと言われてる気がした。嬉しかった。
先生のお陰で、弔くんと黒霧に会えた。そしてトガちゃんや荼毘、ミスターにトゥワイス、スピナー、マグ姉に会えた。
それだけで十分なはずなのに......
前とは違ってどこか満たされない心。
そして合宿以降、明らかに頭にイレイザーヘッドがチラつく回数が増えた。
けれど生憎、私はまだこの感情を的確に表現できる言葉を持ち合わせていない。