第22章 林間合宿 3日目※
「どういう個性かは知らないが、右ポケットに入ってたコレが爆豪、常闇だな?エンターテイナー。」
『あ...』
障子くんの方を見ると、彼の手に持っていたのは2つのビー玉。
「へェ。あの短時間でよーく見つけられたな。さすが6本腕、まさぐり上手め。」
手のひらをヒラヒラさせながら、余裕そうな声色でヒーローの卵を褒めるミスター。そう言ってる間にもデクくん、轟くん、障子くんはどんどん走って逃げてしまう。
『ミスターなに取られてんの...』
「アホが...」
「いや待て」
私は3人を追いかけようと足を踏み出し、荼毘は蒼炎を放とうと右腕を伸ばしたところでミスターが手で制した。私も荼毘も訝しげにミスターを見た。
「...は?逃げちまうぞ」
『...ミスター?』
走り去ったはずのデクくんたちが、こちらへ引き返すようにして戻ってきた。デクくん達の進路を塞いでるのは脳無ちゃんと....黒霧だ。
『ッ!黒霧!!』
久しぶり、といっても3日ぶりなのについ嬉しくて黒霧の名前を呼んだ。
その瞬間、私たちところへポツポツとワープゲートが開かれた。
「合図から5分が経ちましたよ。さ、行きますよ皆さん。」
「ごめんねッ!イズクくんまたねッ」
「トゥっ!!」
それぞれ自分の近くに張られたワープゲートに入っていくトガちゃんとトゥワイス。トガちゃんは語尾にハートマークでも付きそうな猫撫で声でデクくんに言い放ってワープゲートの中へ消えて行った。
張られたワープゲートへミスターが入ろうとしているのを見て私も荼毘も同時にミスターへ声をかけた。
「おいミスター」
『まだかっちゃん取られたままでしょ?』
「あぁ。あれはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントしよ」
「なに....ッ...?」
ミスターの意味深な言葉に轟くんがこちらをジッと睨んでいる。
「癖だよ。マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは、見せたくないモノがある時だぜ。」
な?と言ったミスターの顔は完全に私へ向けられていた。同時に仮面を取り外し、舌を出すとその上には2つのビー玉が乗っかっていた。
その言葉は、ミスターに頼んだ洋服を受け取った時の事を揶揄しているのだとすぐに分かった。
揶揄われた事も、その時のミスターとの行為も思い出してしまい一気に顔に熱が集中する。