第22章 林間合宿 3日目※
「ちゃんが走って行ったあとすぐに出久くんが来ましたぁッ!ボロボロの出久くんカッコよかったぁッ......」
質問とは違う答えが返ってくる。
いずく...くん?誰?と思ったがすぐにそれがデクくんの本名だと思い出す。ボロボロ、という言葉を怪訝に思うと同時に変な焦りが出てきた。
『トガちゃん......デクくんと、なにか話した?』
「いえ!追いかけたのですがすぐに見失っちゃいましたッ!」
『そっか。』
私の姿でトガちゃんとデクくんが接触してない事に安心した。だって私デクくんの事出久くんなんて呼ばないし。
まるで目の前にデクくんがいるかのように恍惚とした表情をみせるトガちゃん。その顔はまさに恋する女の子の顔だった。
『トガちゃん、デクくんの事好きなの?』
「えへッ!!実はぁ...ちゃんとショッピングモール行った時にかっこいいなぁって思ったんですけど、さっきボロボロな出久くん見たらもっと好きになっちゃいました...ッ...!」
好きなもの好きと言えるトガちゃんがちょっぴり羨ましいと思った。そしてそんなトガちゃんが可愛いとも思った。
『トガちゃん、可愛い』
「ちゃんの好きな人は弔くん?荼毘くん?それとも圧紘くんですかぁ?」
『なッ......別に私はそんなんじゃ...』
「だってぇ、さっきちゃんに変身した時、手鏡で裸んぼになったカアイイちゃんのお顔見てたら首に見えちゃいましたッ」
自分の左右の首筋を人差し指でトントンと叩くトガちゃん。
『ッ...!!』
身体のそんな細かいところまでちゃんと本人になるんだと関心すると同時に、あまりの恥ずかしさに何も言えなくなってしまった。
「好きがたくさんある事はステキな事なのですッ!私はステ様も好き!出久くんも好き!お茶子ちゃんも好き!ちゃんも、連合のみんなも大好きなのですッ!」
両手を自分の頬に添えて嬉しそうな顔で言うトガちゃん。
『お茶子ちゃんって、麗日さん?』
トガちゃんの口からまさか麗日さんの名前が出るとは思わなくて驚いた。
「はいッ!て事で私はこれからそのお茶子ちゃんのところへ行ってくるのですッ!血ィもらえるかなぁ」
くるくると楽しそうにその場で周ったあとに、トガちゃんは森の中へと消えていった。