第22章 林間合宿 3日目※
周囲の音が一瞬にして消えた。
イレイザーヘッドが私の名前を呼んだ。仮面を付けた私を見てと呼んだ。
ば......れた......?
鼓動の音が頭を埋め尽くしていた。
どうする?なにを話す?なんて答えるのが正解?心の中で自問自答を繰り返した。
「相澤先生!!!!」
聞こえてきた自分の声に無意識でそう叫んでしまったのだと思った。でも私は声を発してない。頭がパニックになってついに自分の幻聴が聞こえてきたのだと思った。
「相澤先生!!大丈夫ですか!?」
また聞こえてきた自分の声。私の背中で私の声が聞こえた。2度も。
「......!!施設にッ、逃げろ...!!」
私の膝が緩んだわずかな隙に首を少し持ち上げ、私の名を呼んで逃げろ、と言うイレイザーヘッド。でも今度は私ではなく、私を挟んでその向こうの誰かに言っていた。
その瞬間イレイザーヘッドが瞬きをし、抹消が解除された隙に捕縛布からすり抜けて、地面に刺さったままの小刀を抜き距離をおいた。
「かはっ......くそ...ッ...」
そして後ろを振り返り、声の正体を見て唖然とする。そこには私が立っていた。声も顔も身長も私だ。まるで鏡を見ているかのようだった。
仮面越しに、もう1人の私と目が合うと一瞬ニヤリと目の前の私が笑い、森の奥へ目配せした。
見知った笑い方にそこではたと気づく。
トゥワイスの個性は身長から体重、足のサイズまで細かいデータが必要だったはず。私はまだ測らせてないからトゥワイスに私のコピーは作れない。
だとしたらあれはトガちゃんだ。目配せしたのは森に逃げろということだろうか。
トガちゃんの正体も個性もまだ、イレイザーヘッドは知らないはず。これで杞憂だったと思ってくれればいいけど。
ここは、私に変身したトガちゃんにやり過ごしてもらうしかない。トガちゃんを一瞥してから森の方へ逃げるようにしてその場を去った。