第22章 林間合宿 3日目※
ふと視線を施設の方へ戻すと、イレイザーヘッドに組み敷かれていた荼毘のコピーがゆっくり立ち上がっていた。
再びイレイザーヘッドの捕縛布で拘束された荼毘のコピーは、一定のダメージが蓄積したのか、泥のように崩れて消滅していった。
『あーあ。早いよ荼毘。』
崩れていく荼毘のコピーを見てポツリと呟き、こちらへ走ってくるイレイザーヘッドの進路を塞ぐようにして木から飛び降りた。
「......お前、USJの時の...」
頭の先から爪先まで品定めするかのように視線を向けられたあとにイレイザーヘッドがつぶやいた。
イレイザーヘッドと何度もやり合ってきた。大丈夫。と内心に漏らした。イレイザーヘッドの呼吸を読む。息を吸う、息を吐く。そして呼吸を合わせる。
ゆっくり一歩、二歩と踏み出した。ただひたすらに距離のことを考えていた。自分の距離を確保したほうが勝ちだ。
自分の拳が当たる距離、小刀の刃が当たる距離、確実に命中させられる距離、そこまで近づく必要がある。
『......いくよ、イレイザーヘッド』
三歩目で地面を蹴って、一気にイレイザーヘッドとの距離を詰める。大きく飛躍しイレイザーヘッドの首を狙って足を大きく振り上げた。
イレイザーヘッドの捕縛布が私の足をめがけて飛んできた。捕らえる気だ。
『捕まる気はないから』
飛んできた捕縛布に足を捉えられる。と見せかけ、個性で捕縛布を吸収し右手から小刀を取り出した。
「なっ......!」
私の個性に気がついたのか、一瞬驚いた表情を見せたもののすぐにイレイザーヘッドが個性を使い、足に吸収しかけていた捕縛布は、私の個性が抹消された事で弾かれるようにして私の身体から離れた。
両足を地につき再びイレイザーヘッドと、距離を取る。呼吸を整える。
「それがお前の個性か」
左手からもう1本小刀を取り出そうとしたが、出てこない。
そりゃそうだよね。個性が消されてる。
『チッ......』
右手の小刀を掌の中でぐるりと構え、イレイザーヘッドに向かって走った。右手に持っていたナイフを大きく振りかざす。
「予備動作がいちいちデカイな。バレバレだ...ッ...!」
イレイザーヘッドの捕縛布が私の右手目がけて飛んでくる。また捕まる、そう思った時には私は右手に持っていた小刀を真上に空高く投げた。